Facebook Post: 2019-07-08T15:48:21

これ酷い話ですよ。まさに「やらせ復興」「復興のねつ造」じゃないですか。

有料会員限定記事だけど、末尾に全文引用してご紹介します。

復興をアピールする集会を復興庁が企画し、都合のよい人選をした上、首相を前に「読み上げる」原稿まできっちり指定され、ご本人が用意した原稿はおろか、事実でない部分を削除して作り直した改良案すら認められなかったと言うから酷い。

以下全文引用ーーーーー
「福島住民「首相への本音、止められた」 演出される復興」

7月1日の朝、大型バスが「新装」された事業所の玄関前に着くと、出勤の社員が次々に降りてきた。この日、東京電力が原発建設のため青森県東通村に設けていた出先事務所が、「青森事業本部」に格上げされた。社員は20人増え70人体制に。本社の常務執行役、宗一誠(そういっせい)氏(55)が本部長に就き、現地に常駐する。

写真・図版
玄関の看板に「青森事業本部」の冠が付いた東京電力の出先事務所=1日午前、青森県東通村

 会議室に集まった全社員に、宗氏が訓示した。「安全で最新鋭の原子力発電所を造り、地域の未来に貢献しなければならない」

 建物の隣には、杉林に囲まれた808万平方メートルの原発用の敷地が広がる。東京ディズニーランドの約16倍で、東北電力と約半分ずつ持ち合う。2005年末に運転を始めた東北電力の原発は、11年3月の東日本大震災と東電福島第一原発事故で止まり、再稼働できていない。

 一方、東京電力の敷地では、この2カ月前に着手した国内最大級の出力138万キロワットの原発建設工事が中断した。東北を中心に深刻な被害をもたらした当事者がいま、その再開に向け地ならしを始めた。

写真・図版
地図

東電、借金経営なのに寄付
 今年3月末、東電は村に2億円をふるさと納税として寄付すると表明した。事故で経営危機に陥った東電は国有化によって救済され、被害者への賠償に必要な9兆円を無利子で借りている。そんな立場のため、寄付行為は事故後の事業計画で、「原則廃止」にしてきた。

 なぜ、態度を変えたのか。その理由を考えるため、東通村を訪ねた。

 建設予定地の周辺には、建設作業員向けのアパートやプレハブ宿舎がある。人影は少ない。閉店した飲食店なども散見される。予定地から北へ2キロ。漁船が10隻ほどつながれている小さな漁港で、村で生まれ育った漁業関係者(76)が言った。「工事が止まって、お客がいなくなったんだもの、商売は続かないよ」。地元では、原発建設の早期再開を含めた「地域貢献」を望む声が強かった。

写真・図版
工事の中断が続く東京電力の原発建設予定地=1日午後、青森県東通村

 訓示を終えたばかりの宗氏に寄付の理由を尋ねると、「福島の廃炉が進むなかで新潟、青森といった(原発のある)ほかの地点でも、地域貢献にしっかり取り組む一環です」との答えが返ってきた。

 世耕弘成経済産業相の4月の記者会見を思い出した。東電の寄付の是非を問われ、「東電は村の地域再生計画の趣旨に賛同し、寄付を決めた」と、理解を示した。宗氏のコメントと趣旨が重なる。

民意無視、国策で進む原発
 第2次安倍政権は、事故を受けて「原発ゼロ」を掲げた旧民主党政権の政策から、原発推進に転じた。30年度に原発の比率を全ての電源の20~22%にするとの基本計画もつくった。

 新しい規制基準で再稼働した原発はこれまで9基。20%達成には30基以上が必要で、最長「60年」の運転寿命をフルに活用できる東通原発は政府にとっても貴重な電源だ。それには村の協力が不可欠となる……。

写真・図版
全発電量に占める原子力と再生可能エネルギーの比率

 経産省資源エネルギー庁は2月、「事故がなければ原発は完成し、固定資産税が得られていたはず」として、村への原発交付金を19年度に10億円積み増すことにした。国会の審議なしにできる交付規則の特例の適用だ。

 経産省は東電の最大株主で、経営を細かく指導する立場でもある。事故を起こした東電も、立地自治体も建設再開に前のめりになれるのは、国のお墨付きがあればこそだった。

 そして、原発再開に「56%が反対」(2月の朝日新聞社世論調査)という民意とかけ離れた国策が進む。経産省に言わせれば、再生可能エネルギーより原発のほうが「安定」した電源。それにこだわり続けていいのか、本来なら参院選で大きな争点にならないとおかしいはずだ。

 議論を遠ざけているものがあるのではないか。一つの出来事が思い浮かんだ。

町が用意、首相への「発言案」
 第一原発がある被災地・福島県大熊町で4月14日、安倍晋三首相と町民5人との「車座集会」が開かれた。5月の役場再開に先立ち、首相の日程に合わせて実施された開庁式後に、復興庁が企画したものだ。

 5人は復興庁と町が選んだ、帰還や復興への思いが強い人たち。新庁舎の一室でそれぞれが思いを述べる中、旧役場近くで喫茶店を営んでいた武内一司さん(66)は、原稿の書かれたA4判の紙からほとんど目を離さず、たどたどしく読み上げた。

 紙は復興庁の要請を受け、町が用意した「発言案」。読みづらい小さな字だっただけでなく、本当に伝えたい内容がなかった。

写真・図版
新庁舎完成に伴い催された車座集会で、安倍首相(左)に「発言案」を読み上げる武内一司さん(中央)=4月14日、福島県大熊町の大川原地区

読めなかった「前に進みません」
 私は武内さんと事故直後から親しく、発言案は前日夜に見せてもらっていた。

 「私は一日も早くお店を再開したい」「店の再開は町長との約束でした」。これは事実。だが「落ち着いたら、娘に店を任せようと思っています」との一文は、どうなるか分からないので読みたくないと話していた。事故前の店の説明で、「役場、近くの病院や銀行、町民の方などが多く来ていた」というのも正確ではない。武内さんによると、東電社員や協力会社の人たちがほとんどだった。

 武内さんは発言案のほかに、二つの原稿を上着の内ポケットに入れて集会に臨んでいた。活字が小さすぎると気の毒に思った妻(60)が、発言案をパソコンで大きな文字に打ち直した文書。「娘に店を……」の部分だけ削っていた。

 もう一つは、発言案を渡される前に、武内さんが自筆で書いた原稿だ。

 そこにはこうあった。「町職員や商工会の人はいっしょうけんめいやっています。それでも前に進みません。東京オリンピックで東京は盛り上がっています。大熊の人たちは毎日の生活がたいへんです」

 町からは発言案を読むよう指示されていた。当日、会場で改めて自分の原稿でもいいか聞いたが、「復興庁の職員から『駄目だ』と言われてしまった」。妻が打ち直した紙も認められなかったという。

写真・図版
原発事故から8年たっても放置されている倒壊家屋=6月25日、福島県大熊町の中心部

過酷事故、まるで遠い昔に
 終了後、ため息交じりでこう打ち明けた。「しょうがない。あんまししつこく言うと、町長の顔が立たないから。でも、総理には本当のことを直訴したかった」

 車座の席で、首相から声をかけられた。「喫茶店は『商業施設』が完成し次第、戻ってきたいでしょうね」。武内さんは押し黙った。商業施設は役場が開庁し間もなくすればオープンする予定だったが、予算内で建てる業者が見つからず、1年以上遅れる。武内さんはそれを町から聞かされていたが、のみ込んだ。

 政府が6月に閣議決定したエネルギー白書で、福島は「復興に向けた取り組みが着実に進んでいる」と書かれた。たしかに旧避難指示区域内での学校や診療所の建設はこの2年で、ようやく進み始めた。だが、戻った住民は3割ほど。「着実に」とはほど遠い。

 過酷な事故が起きたのは遠い昔なのだろうか。国の「復興」で事故の現実が見えにくくなるにつれ、原発政策はますます民意から離れていく危険性をはらむ。

     ◇

 大月規義 51歳。編集委員。東日本大震災と原発事故の被害や復興を取材。
https://digital.asahi.com/articles/ASM754J6JM75ULZU00H.html?ref=mor_mail_topix2

カテゴリー: Facebook, 未分類 パーマリンク

コメントを残す