「生きた英語」というゾンビ

先日目にしたこの記事について考えたことを書き忘れていました。消えてなくなると話がわからなくなるので、リンクつきで本文を引用しておきます:

英語の授業に外国映画、「生きた英語」へ試み

「ローマの休日」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など、外国映画を英語の授業に取り入れる試みが広がっている。

 新学習指導要領の実施に伴い、高校では新年度から「授業は英語で行うのが基本」になる。映画の「生きた英語」を活用するため、16日には全国の英語教師や大学教員らで専門学会を設立し、教材にふさわしい「映画英語アカデミー賞」作品を発表する。

 「映画の魅力が、英語への苦手意識を払拭してくれる」。オードリー・ヘプバーン主演の名画「ローマの休日」を繰り返し授業で使っている名古屋市立平針中学校の松葉明教諭(53)はこう語る。

 授業では、10分ほどの場面をDVDで見せた後、会話の要約に挑戦させたり、発言の真意を読み解かせたりする。松葉教諭は、「英語が苦手な生徒も興味を示す。映画で英語が好きになったという生徒もいた」と話す。
(2013年3月15日17時57分 読売新聞)

言及されている学会にもお友達が名を連ねてますし、映画を使った取り組みを否定するつもりはありません。むしろ、こういうことを「生きた英語」と絡めて報道する低レベルの新聞記者に対する批判です。

英語の授業に外国映画、「生きた英語」へ試み

「英語で授業」がそっちに行っちゃいますか?!って感じですが、わかってないねぇ。生徒にとってもっとも生き生きとした英語は、教室で教師と生徒が使う英語だってこと。

それができない人には、映画を持ってこようが何を持ってこようが、うまく行きません。

それに、自分だって映画を活用することもありますから、映画の魅力も効果も否定するものではありませんけど、そればっかりじゃ力はつきません。

まあ、最近の新聞記者は、実際には聞いてもいない話をあたかも聞いていたかのように、誰かから入手したメモを元に記事をでっち上げて平気な輩もいるようですから(靜さんのブログ参照)、取材されている学会の趣旨とは必ずしも合致していない可能性もありますね。

この学会についての批判ではなく、あくまでも一般論ですが、映画だけじゃなく、多読や多聴など、何らかのメソッドや方法論の信者の中には、しばしばそれらがミラクルを起こす万能薬のように吹聴する、バランス感覚を欠いた主張が散見されます。そういうのにホイホイと乗っかって振り回されるのは、報道関係者に限らず、現場の教師に多いのも、これまた悲しい現実。

ぶれずに振り回されない、見栄えではなく実を取る実践ができる、バランス感覚に長けた現場教師が増えなければいけませんね。

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