タンペレでとても懇意にしてくれているご一家が、偶然イバロ出身で、私の旅行のことを知り、早速地元で教師をしている親戚に連絡を取ってくださいました。
それで、急遽、小学校2年生と4年生のクラスでそれぞれ30分程度の時間をくださり、日本について何か授業をすることになりました。
簡単で、達成感があり、ある程度実用性もあって、何か形に残るもの、と考えた末、算数の授業ということもあり、それにもちなんで、日本語の数1〜5と、それに対応する漢字を書いてみるという授業を計画しました。
こんな展開:
- フィンランド語であいさつ、自己紹介
- 指で数を示しながら、日本語の「いち、に、さん、し、ご」の音声を聞かせて練習
- アラビア数字を見せながら、日本語の数を練習
- 「一、二、三、四、五」の漢字を見せながら、日本語の数を練習
- 漢字を指差し、日本語の数を言う練習
- 漢字の書き方を説明し、板書してみせる。
- 漢字を身体で表現してみる。
- 筆順を記入したなぞり書きのワークシートで、一から五の漢字を練習。
- 終わった子から、本番のワークシートを配布。
- できあがった子から私に見せに来て確認、フィンランド語の名前の横に、カタカナで名前を書いてあげる。
- 最後に、漢字を見ながら1〜5の読み方を確認して終了。
担任の先生との打合せはほぼなしだったので、どんな展開になるか予想がつきませんでしたが、いきなり紹介され、自己紹介を求められ、1の手順に突入しました。フィンランド語で名前や出身、いつフィンランドに来たか(だからkoronaはないよ〜、で笑い)、今はタンペレに住んでて、日本では大学で教えている、など。
まずは「フィンランド語で数を数えられるよ」と私が1〜10まで言ってみせました。それから、「みんなは、日本語で数えられる?」で、し〜ん。「今日は、日本語で1〜5まで数えられるようになるよ、ついでに日本語で書けるようにもなるよ」と、業界用語で言うところの、「めあて」を提示(笑。
音を聞いてすぐに繰り返せすのは、フィンランド語の音韻体系が日本語と似ているため、たいした苦労もなく、上手に言えていました。逆順に言ってみたり、ランダムに言ってみたりして、揺さぶり。
漢字の紹介は、「一」を横にしてアラビア数字と比べてみたり、「二、三」は本数を数えてみたり、長さを比べたりして説明。「簡単でしょ?」とフィンランド語で言うと、ニコニコ。そして、「四」を出すと、ちょっとざわめき。
まずは漢字を見ながら、音声を言う練習。逆順やランダムの揺さぶり練習。さらに、ローマ字で書いた読み方のヒントを隠して練習。「字が背中に写ってるよ!」と教えてくれました。
漢字を書く練習の前に、漢字を身体で表現してみるお遊びで準備運動。さすが小学生、これはノリノリで、おのおの楽しそうに全身で表現。やはりこういうときにいちばんノルのは、お茶目そうな男子。
それからなぞり書きのワークシート配布して、各自で練習。好きな色のクレヨンやペンなどを使うといいよ、と。タイトルと指示はフィンランド語で書いてあるのに、目が漢字に釘付けになって圧倒されてか、数名の子はワークシートを逆さまにしてにらめっこ。低学年の子たちはまだ文字を書くこと自体に慣れていないためか、あるいはアルファベットには縦の線が多いためか、シート自体を横向きにして一、二、三を書いている子もいました。ある意味、賢い。
なぞり書きはそれほど苦労せず終了。文字の枠だけ印刷されている仕上げのワークシートには、真っ白ではかなり難易度が高いだろうと、各筆の始点だけを点で示しました。字の大きさや構成は、なぞり練習と同一なので、それを手本にして書くことができます。
どちらの学年も、とても上手に書けていました。予想では、四、五はパスする子もいるかと思いきや、全員が難なくクリア。できあがって見せに来た子から、確認とご褒美のつもりで、フィンランド語の名前の横にカタカナで名前を書いてあげました。これが予想以上に好評で、写して練習したり、ノートの表紙の氏名欄の横にカタカナで書いたりしていました。文字を書けるって、やはり達成感も強く、うれしいものなんだなと、改めて認識しました。
全員が目標を達成したところで、板書した漢字を見ながら1〜5まで数え、Näkemiin!(さよなら)とあいさつして、おしまい。
終わった後も、自分で書いた自分のカタカナの名前をうれしそうに見せに来たり、「〜は日本語でなんて言うの?」など、とても興味を持ってくれていました。こういうことって、不思議と記憶に残り、忘れないものです。今日の子たちの中から、将来日本や日本語に興味を持ってくれる子が出てきて、あのときの数のミニ授業がきっかけだった、なんてことになるとうれしいなぁ。