信頼関係のあるなしで…

末尾に引用した記事に書かれている問題、上手くいかない根本的な理由は、事業を担う政府・行政と市民の間に、信頼関係がないからじゃ?
 
そもそも、マイナンバー使おうが拒否しようが、あらゆるデータには番号がつけられて管理されている。これまでバラバラに管理されていたものを、システム的に紐付け集約されるかどうかの違い。
 
事業を提案する側も、本当に市民の利便性を追求してシステム作りしているような感じがしない。それどころか、何か企んでるんじゃないかという臭いすらする。そういう不信感を拭いきれないような裏切り行為を繰り返してきているのだから仕方ない。信用というのはそういうもの。
 
サービスを受ける市民も、本当はいろいろなことがまとめられて安全公正に管理されれば便利になるとはわかっていても、どうも信頼しきれない。そういう背景があるのだから、仕方ない面もある。一方では、こういう問題には、必ず片っ端から過剰に拒絶反応を示すタイプの人もいるのも事実。
 
技術的にも、そりゃそうだろうっていうレベルのひどい仕様。そもそも、システムの仕様を提示する段階で、特定のOSに依存しないということは盛り込まれてなかったのか?
 
フィンランドでは、マイナンバーカードのような特別なカードは発行されないが、警察署で発行されるパスポートを兼ねた身分証明カード(外国人の場合はパスポート機能なし)に埋め込まれたICチップを直接読み取って認証する方式もある(外国人が身分証明を確立するまでの顛末は、拙ブログの「人間の証明への長い道」や「ようやくID確立」を参照)。
 
ICチップ読み取りによる認証に加えて、身分証明書に基づいて口座が開設されるオンラインバンキングを組み合わせて個人認証を行い、様々なサービスにログインできるようになっている。ほとんどの場合、こちらを利用していると思う。
これは、各種サービスを利用するにあたり、個人認証をするためにいったん銀行のオンラインバンキングにログイン、そこへサービス利用の問い合わせが行われ、正しく認証された場合にはそのサービス利用を許可するかどうかユーザが選択、許可されれば元のサービスに戻り、利用が継続されるという仕組み。
 
政府行政と市民に信頼関係があると、システムが上手く機能し、すこぶる便利。
以下が、ここで話題にしている記事の引用:

マイナンバーのサイト、100億円かけ利用率0・02%

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座小田英史 酒井祥宏、富田洸平 

 

 

マイナンバーと結びついた自分の情報の使われ方などが分かる国の個人向けサイト「マイナポータル」のサーバーの利用率が、想定件数の0・02%にとどまることがわかった。このサーバーには、国民の大半がマイナンバーカードを保有しても対応できるように、2018年度までの6年間に100億円を超える整備費などをかけていた。サーバーの使用期限は今年度までで、国は来年度から新システムに切り替える。

国が進めるマイナンバー制度のネットワーク事業をめぐっては、ハローワークと他の公的機関をつなぐサーバーを厚生労働省が約80億円かけて整備しながら、利用率が0・1%だったことが判明している。過大な想定に基づくサーバー整備の実態が改めて浮かび上がった。

このサイトでは、マイナンバーカードの保有者(今年4月で1657万人、国民の13%)がパソコンなどからログインすると、マイナンバー法で定める三つのサービスが受けられる。①自分の個人情報をどの行政機関がどう利用したかチェックできる②自分の所得や社会保険料の納付状況などを確認できる③税金や予防接種などのお知らせを受け取れる。なりすましなどによるマイナンバーの不正利用を懸念する声を受けて、整備された。

入手した資料や内閣府の説明によると、サーバーは、国民の7割近くの8700万人がカードを保有し、ネットを使う人の一部が月に1回利用してもパンクしないように、①~③の利用を最大で月2025万件近く(①②は各609万件、③は約807万件)と想定し、それに合わせた処理能力などを持つサーバーを整備。セキュリティーを確保する維持管理費も支出してきた。

ところが、サービスが始まった17年7月~今年5月に①~③の利用は11万件余にとどまり、月平均にすると5千件近く(①707件、②3147件、③1130件)と想定の0・02%だった。仮にそれぞれの利用が最も多かった月を拾って件数を合算しても、利用率は0・08%となった。

内閣府はサイトの運営を続けながら、新たな整備費をかけ、ネット上でデータを処理するクラウドを中心とした新システムを構築し、来年度から使う。現在のサーバーは想定に基づいて整備し、維持管理する必要がある。想定が大きいとその分だけ費用が膨らむ。クラウドだと実際の利用に応じて費用が決まるため、利用が少ない場合に支出を減らせる。

内閣府番号制度担当室は「個人情報保護の観点から、国民の安心を確保する上で重要なサービスと考えている。ただ、予想以上にカードの普及を進められず、初めての取り組みで想定通りの利用件数にならなかった。新システムで予算は抑えられるはずだ」と説明する。

マイナポータルには、自治体の子育て支援事業などの検索や電子申請ができる「ぴったりサービス」も備わっている。すでにクラウドで整備しており、支出額は18年度までの3年間で約26億円。内閣府は今後、介護や引っ越し、相続などの行政手続きもできるようにしたいとしている。また、ログインした状態で様々な公的サイトに移動できるサービスなどもある。こちらは①~③と同じサーバーを使うが、ほとんど負荷をかけないため想定件数はなく、利用件数も三つのサービスより少ないという。(座小田英史)

iPhone非対応「利用増えると思えない」

国が運営するマイナンバー専用の個人向けサイト「マイナポータル」のサービス開始から2年。マイナンバーカードの普及が進まないのに加え、利用率が極端に低迷している背景には使い勝手の悪さもある。

このサイトにパソコンでログインする場合、マイナンバーカードに内蔵されたICチップを読み取ることのできるカードリーダーが必要だ。スマホなら、カードリーダーがなくても、専用アプリをダウンロードし、端末をカードにかざしてICチップを読み取れればログインできる。ただ、対応できるのは米グーグルのOS(基本ソフト)「アンドロイド」を使う一部の機種。国内シェアの半分を占める米アップルの「iPhone(アイフォーン)」は対応していない。

そのため国会などでマイナポータルは利用しづらいとの声が出ていた。ログインできないスマホがあると知った神奈川県の40代の女性会社員は2人の友人と利用を試みた。3人が持つ計8台のスマホのほとんどはアンドロイドだったが、いずれも対応していなかった。「スマホを買うときに、わざわざマイナポータルに対応できる機種を調べる人はいない。アイフォーンも使えないようでは利用者が増えると思えない」と話した。

サイトにログインできない人のため、専用ブースを設けてパソコンを用意している自治体もある。1台を置く東京都千代田区では昨年度、利用は2件にとどまった。都内の別の区は10台以上用意したが、ほとんど利用されていなかった。

6月下旬、同僚の男性記者がこのサイトにパソコンからログインした。「世帯情報」には「世帯主」という続き柄、各世帯に割り当てられた番号、情報を所有する自治体名が表示された。公的機関による個人情報のやりとりの履歴をサービス開始時から確認すると、やりとりがなかったことを表す「閲覧対象なし」という回答が出た。

内閣府は年末までに、アイフォーンの一部機種について対応できるようにする予定だ。担当者は「アクセス手段を拡充して、マイナポータルの利用率を高めたい」と話す。(酒井祥宏、富田洸平)

利用想定、あまりにも現実離れ

会計検査院の官房審議官だったあいち刑事事件総合法律事務所の星野昌季弁護士〉

サーバーの利用想定はあまりに現実離れしており、個々のサービスの必要性や費用対効果を厳密に検討してマイナポータル事業の内容や規模を決めたとは思えない。マイナンバー関連では他のサーバーでも利用の低迷が判明しており、国が事業や予算の全体像を明らかにしたうえで、過大で不要な予算が投じられていないか、第三者による実態調査と徹底的な検証が必要だ。

マイナンバー制度〉 日本に住民票がある一人ひとりに12桁の個人番号(マイナンバー)を割り振り、自治体や年金事務所、税務署など公的機関が別々に持つ個人情報を番号に結びつけ、公的機関同士が必要な情報を照会し合う仕組み。国は行政手続きの添付書類が不要になるなど利便性が向上するとしている。個人の認証機能があり、身分証明書としても使えるマイナンバーカードは2016年1月から交付が始まった。

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