Kikatusを参観

タンペレ市では、2016 年度から今年度まで、1,2 年生を対象に Kikatus(文字通りの訳は giggle)という外国語へのいざないの授業を展開していました。

DSC00294これは、英西中仏独露と公用語であるスウェーデン語の中から、学校の事情に応じていくつかの言語を選択し、挨拶や数字、基本的な語句や表現を楽しみながら学び、様々な外国語に触れる機会を設けることを目指した授業でです。まさに本来の「外国語活動」であると感じました。

フィンランド語ではありますが、教材や指導案などの解説を含むページが公開されています(https://kieliakehiin.blogit.tampere.fi/)。市のレベルでこのようにしっかりとしたサポートをしているのは素晴らしいことです。

Kikatusは1、2年生を対象に実施される授業ですが、その 2 年生最後の授業を参観することができました。低学年向けということもあり、10 分程度の活動モジュールを複数組み合わせて授業が構成されていました。参観した学校では、同じ内容の活動を英独仏西の各言語で数週間ずつ展開したそうです。

最後の授業では、英語に関して復習や確認を行った後、生徒たちは各自Kielipassi(言語パスポート)をまとめて提出していました。

このパスポートには、これまで授業で扱った言語について、基本的な情報がまとめられており、1年間の取り組みを振り返る材料になっていました。

表紙をめくると、自分の似顔絵や氏名、年齢、母語など、活動の元になる情報を書き入れるページに続き、各言語を使用する国の旗、数や色、あいさつなど簡単な内容のまとめと、Can-Doリスト、確認印のページで構成されていました。

各言語のセクションには、フィンランド語で次のようなチェックリストが設けられていました。

  • あいさつができる
  • 自分の名前が言える
  • ありがとうと言える
  • 数が言える
  • 色が言える
  • 国旗に色が塗れる
  • 歌を聴いてわかる
  • 自分で歌が歌える

残念なことに、国家カリキュラムの改定で来年度から1、2年生から外国語の授業が実施されることになるため、このKikatusという授業も外国語授業に吸収されるそうです。国家カリキュラムにレベルで 1 年生から外国語の授業を実施することについては賛否多くの議論があったようです。実施に際しても、教員の確保やカリキュラム編成などについて課題も指摘されて、これからの実施を見守っていこうという状況です。

フィンランドでは、公用語であるフィンランド語、スウェーデン語のうち、母語でない言語を学習し、さらに英語を含めて複数の外国語を学習することになっています。訪問した学校でも、先に英語を履修するクラスと、独西仏語から学習するクラスに分かれていました。

タンペレ市の場合、これまでは生徒たちは Kikatus の授業を受けてから、どの外国語から学習するか選択できていたのが、Kikatusの終了と1年生からの外国語履修によって、その機会が失われてしまうのが大きなデメリットとのことでした。

さて、日本では「外国語活動」の開始から10年近く経ち、その効果や教員養成体制の検証など、きちんと行われたのか疑問が感じられる中、高学年での英語の教科化(教科として実施されるのは英語のみ)、さらに「原則として英語とする」というインチキ看板の「外国語活動」(Kikatusのように複数の外国語を扱うのではなく、英語のみである点に注意)を中学年に下ろすという政策が打ち出され、来年度から実施されようとしています。

Kikatusや複数言語の学習という体制を長く実施し、ある程度の知見を積み効果を検証した上で1年生から実施するフィンランドの状況と、なし崩し的に英語ありきの妄信的政策がとても対照的に感じられます。

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