もともと2時間半授業で週3回の短期集中コースなので、展開は早いことは覚悟してましたが、フィンランド滞在歴数年級が多数を占めるクラスで振り落とされないようについていくのは結構大変です。中には滞在歴4年で、こちらで大学院を出たという強者までいます。それだけ、英語だけで生活できてしまうと言うことです。
英語が苦手だった息子が、私の苦戦の様子を聞いて、「ようやく俺の苦労がわかったか」と、勝ち誇ったように笑ってました。
担当は比較的若い先生ですが、なかなか授業運営も上手で、そういう視点で見ていても勉強になります。
どうしても同じ場所に座り座席が固定化するので、冒頭のウォーミングアップで復習を兼ねた質問と答えをバラバラにしたカードを配り、パートナーを見つけてペアを組ませたり、いろいろな仲間に質問して回らせたりなど、楽しい活動を盛り込んでいます。
所定の教材をcover to coverでそのままの順序で扱うのではなく、クラスの状況や必要度などを配慮しつつ、上手い具合に取捨選択、順序を工夫しながら、繰り返しと積み重ねができるように進行しています。
逆に、反面教師的な経験もしました。英語を教える際に、できる限り英語を使おうとしても、常に先生が英語で言ったことを日本語で繰り返していると、生徒はどうせ日本語で言うんだからと、あまり英語に注意を向けなくなる、ということが言われますが、まさにそれを経験しました。
クラッシュコースだけに、余裕を持って直接法で教えることは難しい状況ですが、それでも先生は指示などでもフィンランド語を積極的に使い、わからない人向けに英語で言い換えてくれるのですが、私などはやはりどうしても英語の方に頼ってしまいます。
授業での練習を通じて名前を覚え、仲良しの仲間もどんどん増え、質問したり教えあったり、それこそ学習は社会的活動だ、なんてよく言われることも実感・体験できました。
自分の復習も兼ねて、これまでに扱った内容をざっと挙げておきます。第二週までに扱った「日常のあいさつ」「人称代名詞(minä, sinä, hän, me, te, he)」「1〜100までの数」「曜日と日付」に加えて、第3週までに
- be動詞ollaの活用
- 国名、言語、出身、それらの質問
- 動詞の基本活用
- 動詞の質問形、否定形
- 母音調和
- いろいろな動詞
- いろいろな疑問詞
- 質問文のトーン
- K-P-Tの子音交代
が、ドサッと出てきました。
英語母語話者は、teとかheを「テ」「ヘ」と母音できちっと止めて発音するのが苦手で苦戦してます。また、フィンランド語では質問かどうかは最初に来る動詞の語尾で決まってしまうので、質問だからと言って上昇調では言いません。通じないわけではないですが、ヘンに聞こえるらしいです。これまた、英語に慣れきった学習者には苦戦するところです。
母音調和というのは、フィンランド語ではvokaaliharmoniaというのですが、ざっくり言うと、同じ語の中に舌の前方で発音される/ä, ö, y/という音と、舌の後方で発音される/a, o, u/という音が、両方出てくることは原則的にない、というルールです。
例えば、後で説明する動詞の変化語尾に-vatまたは-vätというのがあるんですが、元の動詞の音構成によってどちらか決まります。puhua「話す」という動詞なら、既に/u/音があるので、vätではなくvatがつき、puhuvatとなります。
逆に、kysyä「質問する、尋ねる」という動詞の場合は、前に/y/音があるので、語尾もそれに合わせてvätが使われ、kysyvätとなります。
中学生みたいに、「なんでそんな面倒くさいルールがあるんですか?」って質問したところ、近いけど異なる音が入り乱れると口の動きが大変になってしまうからだろう、って説明でした。なるほど。
恐れていた変化形の嵐がですが、下の二つの例のように何となく規則性は感じられます。
ollaというbe動詞に相当する動詞
minä(私)olen
sinä(あなた)olet
hän/se(彼、彼女、それ)on
me(私たち)olemme
te(あなたたち)olette
he/ne(彼・彼女ら、それら)ovat
puhua「話す」という動詞
minä puhun
sinä puhut
hän/se puhuu
me puhumme
te puhutte
he/ne puhuvat
で、練習を積んで、そういうぼんやりした規則性のようなものを身体で感じつつあるところまで来ると、だまし討ちのような例外が紹介されます。
K-P-Tの子音交代(フィンランド語では、K-P-T-vaihtelu)というものですが、これまたざっくり言うと(って、ざっくりしか説明できませんから)、K/P/Tという3つの子音が関与する音で、子音が変化するというルール。促音(詰まる音)が、単独の詰まらない音に変化したり、単独のK/P/Tがそれぞれ-/V/Dという音(Kは消える)になったり、K/P/Tが絡むnk/nt/mp/lt/rtという音連続がそれぞれng/nn/mm/ll/rrに変わったりします。
しかも、sk/tk/stでは変化が起こらず、人称代名詞がhänとheのときにはやはり変化が起こらないという例外つき。やれやれ。
このような活用や音変化は動詞に限らず、名詞にも起こるようなので、もう、どうとでもなれ!という心境で甘んじて受けるしかありません。