せっかく楽しいドイツ旅行から帰って来た翌日、その余韻が台無しになりそうなイヤなニュースに目がとまりました。五八番国の政治とはフィンランドにいる間は距離を置こうと思っていたけど、思いを書き留めておきます。
「令和は「Beautiful Harmony」外務省が英語の趣旨説明」(毎日新聞オンライン)
<どうせすぐもみ消されるかも知れないので、末尾に本文引用しておきます。>
これまでもアベ政権は、言葉の定義を閣議決定を恣意的に運用して歪曲してきました(「首相夫人は私人」「そもそも」「戦闘行為」など)。これは「まさに」(あの人がウソを言うときの枕詞)、言葉の定義を時の政権が都合のいいように解釈しねじ曲げる、言語統制に他なりません。これだけでも内閣総辞職に値する一大事だと思うのに、残念ながらその後、うやむやのまま、しつこく追求されていません。
言語の統制に限らず、今回の改元のプロセスでは、そもそも生前退位について、天皇の希望を政権がずっと棚上げにしておいたことを始め、新元号の引用元を国書にする意向を首相が示したり、皇太子に対してアベが説明するという越権行為など、何かと政権が必要以上に関与し、自らの宣伝に活用しようとする動きが報じられています。
これまで国内でやり放題だったこういった言葉のすり替えやごまかしを、とうとう海外のメディアを相手にしてやり始めました。それが今回の外務省による「官製定義」のお達しでしょう。
悪辣政権の牙は五八番島の外ではたいした威力はないだろうけど、こういう政権の基本的な姿勢・指向を許していると、いつか大変なことになります。いや、実はもう随分前から大変なことになってるけど、みんな茹でガエル式に「慣らされちゃって」、大変だと思っていない、というのがいちばんの問題なのかもしれません。
これまでも何かと外圧には弱いという傾向があったので、ここはひとつ、他力本願ではあるけれど、海外メディアが一斉に反論して、断固論破していただきたい。
元号は、私が中学生の頃に法制化されました。これは本来、元号の法的位置づけをし直しただけの法律のはずでした。国会の議論でも、元号使用の強制についてはかなり議論があり、強制はしないという答弁もありました。しかし、今で言う「忖度」が作用しすぎたのか、お役所などでは元号しか認めないという過剰な運用が目立つようになりました。
元号を二重線で消して西暦を記入すると、そういうことをされては困る、どうしてそういう面倒なことをするのだ、と言われたことも何度もありました。官制大学で学生だった頃は、元号による表記を拒否したために数ヶ月間学生証の再発行をしてもらえなかったこともありました。事実上の元号使用の強制です。
その後は多少「大人」になって、嫌悪感を腹に抱えながらも、円滑な事務手続きを最優先して、妥協してきていました。
でも、これを機に、元号の使用はやめようと強く思い直しました。
今後はますます同調圧力が高まり、ちょっとしたことでも異を唱えにくい世相になっていくことが懸念されるので、あるところで踏ん張ってこだわっておくことは重要かなと。
ただし、教員をしていると、推薦状など自分だけの主張で記入できない類いの書類も多々あります。中学校にいたときは、それこそ調査書をすべて西暦で書き直していたら、生徒にヘンな不利益が生じたり、大問題になったでしょう (どことは言いませんが、インクの色まで指定するような高校もあるくらいですから)。
今後も他人の利益にかかわるところでは妥協もせざるを得ないかも知れませんが、自分にしか不利益が生じないような場面では、思い切り我を通していこうと思います。
それにしてもこのスタンプ、いいなぁ。シャチハタ版はないのかなぁ。
以下、参照記事の引用:
毎日新聞
外務省は、平成に代わる新元号「令和」について外国政府に英語で説明する際、「Beautiful Harmony=美しい調和」という趣旨だと伝えるよう在外公館に指示した。今月1日の新元号発表後、「令」を「order=命令、秩序など」と訳す外国メディアがあったのを受けた措置で、外国メディアにも個別に説明している。
「令和」の発表後、国際的に影響力が大きい英BBC放送が「order and harmony」と表すと報道。「令」については「Command=指令」を意味すると報じる欧米メディアもあった。外務省の担当者は「令和の意味を正確に訳すのは難しいが、全く異なる解釈をされるのを避けるため、趣旨を伝えることにした」と述べた。
外務省内では「令」が律令など法律の意味で使われることがあることから、「『令和』は『法の支配に基づく平和』とも解釈でき、日本の外交姿勢になじむ」といった声も出ている。【秋山信一】
英語メディアによる「令和」の報道
英ロイター通信 令はcommand(指令)の意味で最もよく使われ、good(良い)やbeautiful(美しい)の意味もある。和はpeace(平和)やharmony(調和)といった意味がある。特に若い世代で厳しい語感だと思う人もいる
英BBC放送 令和はorder and harmony(秩序と調和)を意味する。令はcommandsやorder、auspicious(縁起がよい)、goodなどの意味がある。和はharmonyの意味でよく使われ、peace(平和)を意味することもある
米AP通信 令和はpursuing harmony(調和を希求する)といった意味だ。令はgood、beautiful、和はpeace、harmony、mild(優しい)などの意味がある。万葉集からの引用は国威発揚を狙う安倍晋三首相の試みを反映している
米紙ニューヨーク・タイムズ 令和はorder and peace(秩序と平和)、auspicious harmony(縁起がよい調和)、joyful harmony(うれしい調和)などと解釈できる。令にはorderやlaw(法)の意味もあり、軍事的役割の拡大を主張する安倍内閣が選んだとの指摘もある