早すぎてはダメ?
4月15日(月)朝、Juhannuskyla学校に到着。Minnaさんとの事前打合せで授業は8:15からと聞いていたので、30分前くらいに行けばいいかというと、「そんなに早く行っても誰もいないから、どんなに早くても7:55前に行っちゃダメ」と釘を刺されていたので、ゆっくりと歩いて時間調整しつつ向かいました。
登校する生徒に交じって学校に入り、指示されたとおり2階の教員ラウンジへ向かいました。
入り口ドアで通りかかった先生に来校の旨を伝えると、中から担当のIrena先生が出迎えてくれ、とりあえずコーヒーでもいかが、と勧められました。
教員ラウンジは日本の職員室のような場所ですが、教科ごとの机の島がいくつかある作業部屋と、ゆったりとしたソファーとコーヒー紅茶サーバがあるくつろぎスペースがあるところで、まさにラウンジという感じでした。
予定変更!
様子をうかがっていると、どうやらもうひとり授業を見せてくれる予定の先生が急遽病欠らしく、その代替に入ることになった先生が、さて何したらいいかしら?と準備しているところでした。
そのため予定を変更して、Irene先生の授業のみ見学することになりました。この日のIrene先生の時間割は下の通り。
- 9年生英語(第2外国語)
- 空き時間
- 9年生英語(第2外国語)
- 9年生英語(第1外国語)
- 7年生英語(第2外国語)
- 9年生英語(インタビューテスト続き)
フィンランドでは、フィンランド語とスエーデン語が公用語として扱われていて(1999年からは、人口の約0.1%である先住民族のSami語も準公用語に)、いずれかを母語とする場合、もう一方の言語も学習しなければなりません。
外国語については、多くの生徒が第1外国語として英語を選択しますが、先にドイツ語やフランス語、スペイン語やロシア語などを学習し、英語を第2外国語として履修するケースもあるそうです。後者の方が、外国語学習経験が豊富なためか、英語の学習も習得の度合いが高い傾向があるそうです。
Irene先生は教歴20年ほど(と思われる)のベテラン教師。週当たりの担当時数は、7〜9年生の英語の授業が22コマ、これにホームルームを担当するクラスがあり、英語以外の授業をすることはありませんが、出欠確認や保護者との連絡、問題が起きたときの対応などをするそうです。
以下、授業についての観察などは、簡潔にするためにも「である」調で書いていきます。
1時限目:9年生英語
教員ラウンジを後にしてIrene先生について行くと、普段は主に歴史の授業に使われている教室で授業。教室はどこも20数名分の机があり、日本と同様、2席をくっつけた列が2列、前向きに並べられていた。
この日は、14名のうち2名が欠席していて、12名での授業。Irene先生が言うには、「大きめのクラス」らしい。
教材は、Spotlightというシリーズの9年生用のもので、教科書本体とワークブックがセットになっている(教科書については後述)。
挨拶〜宿題チェック
始業時は全員起立したのを見届けて、Irene先生が簡単に英語で挨拶してすぐに着席。日本と同じように起立しての挨拶をするのは興味深い。
最初の3分程度で、宿題になっていた教科書ワークブックの課題の答え合わせ。デジタル教材でスクリーンに正答を映し出し、生徒はそれぞれの答えをチェック。
そうしている間に、数名の生徒が遅刻してくる。遅刻生徒はオートロックで施錠されたドアをノックするかノブを揺らして知らせ、鍵を開けてもらうのを待つ。中からドアを開ける教師に遅刻の理由を報告して入室を許される。鍵などかけることがない日本の教室より、ある意味厳格。
ちなみに、トイレなどに行くときには、生徒はドアを閉めずに、用を済ませて戻ってきたときに閉める流儀らしい。
復習
宿題確認の次に、前時に読んだと思われる範囲の復習。
まずは、スクリーンに映し出したテキストを見ながら音声を聞く。音読部分は自動的にハイライトされるようになっているのは、日本で見かけるデジタル教科書と同じような機能。
かなりまとまった分量の英文を聞かせていた。数名の生徒は手もとの教科書を見ながら聞いていたが、ほとんどの生徒は顔を上げ、ハイライトを追いながら聞いていた。果たして、生徒たちは本当に内容を理解しているのかと不安になったが、先生が生徒をめぐって理解をチェックしている様子を見ると、ほぼわかっているようだ。
リーディング
続いて、本時で初めて読むパッセージに取り組む。
復習と同じように、デジタル教材でスクリーンに映し出しながら音声を再生。音声はどちらかと言えばブリティッシュの影響があるが、それほど偏っているわけではない。途中、教科書を持っていない生徒に貸し出して対応。どこにでもそういう生徒はいるもの。
そして、ペアを組み、生徒同士で1文ずつ交代で音読。聞いて回ってみると、音声的なレベルもかなりの完成度で、クセのある発音をしている生徒も若干いたが、日本の教室で言えばほとんど合格ライン以上のクオリティだった。
続いて、右頁にある穴埋め形式の対話練習をした後、ペアで内容についての理解確認や意見交換をさせていた。生徒の多くは母語を使っていたが、興味深いのはIrena先生が回っていき、タイミングを見て英語で話しに入ると、生徒も何の躊躇もなしに自然に英語にcode switchしていたこと。しかも、英語で振られてもそれを受けて英語で話し続けられるだけの土台がこれまでの学年の指導でしっかり構築されているという印象だった。
Irene先生もそのことを踏まえて、それをこなせると思われる生徒たちにはかなり意識的に英語で話題を振り向けていたように見えた。逆に、母語で支援が必要だと思われる場合には無理に英語で通さず、母語で説明をするなどしていた。
このペアでの意見交換は、かなりゆったりと20分程度かけて行っていた。感心したのは、ふざけたりダレたりすることなく、ほとんどの生徒がパートナーと活発に話を続けていたこと。フィンランド語はよくわからないが、Irene先生に後で尋ねたところ、まったく関係のない話をしている生徒はおらず、読んだ内容に何らかの関係を持ったことについて話をしているそうだ。
おもしろかったのは、Irene先生の介入によってペアでの会話が英語にシフトした後、先生が他の生徒の元に行ってからもペアでの会話が英語のまま続けられていたこと。
内容に関する質問課題
残り時間10分弱のところで、ペアでのディスカッションが終わった生徒からワークブックのライティング課題に取り組むよう指示が出た。一斉に開始と言うより、ペアそれぞれのペースで終わった段階で少しずつ作業に収束して、教室が静かになっていった。この間もIrene先生は生徒たちを回り、様子を見つつコメントを与えていた。
最後の数分で宿題の指示を出して終了。生徒たちはそれぞれ教室を出て次の授業に向かっていった。
この授業に関する考察など
義務教育最上学年の学年末なので、ある意味フィンランドの義務教育における集大成の状態を観察したことになる。
ペアでの話し合いや、教員も含めたディスカッションの時間をたっぷりと取っているという以外、特段珍しいことや変わったことをしているわけではない。それなのに、こんなに英語で表現できるなんて、と驚いてしまう。
しかし、単に生徒中心のディスカッションを多く取っても、それだけで英語力がつくとは思えない。それもおそらくこの学年に至るまでの低学年からの積み重ねの賜であるはず。基本的な語句の指導や、発音のスキル、文法的な知識などはどのようにカバーしているのか、学年によってどのように母語と目標言語のバランスを取っているのか、そのあたりを、8月からの本格的な観察で追っていきたい。
教師の母語使用については、かなり意識をしているように見受けられた。9年生については、母語の使用は最小限にとどめ、生徒が母語で反応しても英語で返すという場面が多く見られた。その一方、一部の生徒については母語で説明するなど、柔軟かつ理に適った対応がなされていた。
2時限目:空き時間
この時間は、Irene先生はもともと空き時間になっていた。そこで、いろいろ質問をしたり、話を伺うことができた。
1時間目の教科書について質問すると、ちょうど新学年からは違うシリーズを使い始めるので、お古でよければどうぞと、教科書とワークブックのセットをくださった。書店で新品を買い求めると、それぞれ50€(約6300円)程度する。もちろん、生徒には教科書は無償で提供される。
教科書、ワークブックいずれもA4版256頁の分厚いもので、教科書は上質の紙にフルカラー、ワークブックは白黒印刷で鉛筆で書きやすい質感の紙が使われている。教科書は学校ごとに担当教員が協議してどれを採用するか決めているという。
教科書に準拠したデジタル教材も用意されていて、参観した授業でも使われていた。教科書本文をハイライトしながらモデル音声を再生したり、ワークブックを提示して順次答えを表示したりできるようになっている。デジタル教材はオンラインでアクセスできるようになっていて、教師はどの教室からでも、必要なら自宅からでもアクセスすることができる。その反面、学期の始めなど、アップデートされた箇所が多かったりアクセスが集中するときに問題も起きるので、そんなときは授業に支障が出ないよう、祈りながら開くこともあるという。
教員の働き方については、事前に読んで知っていたとおり、遅くまで残業することなどなく、だいたい授業が終わるとすぐに帰宅するという。もちろん、たまに自宅に持ち帰った仕事をこなすこともあるが、家庭での生活を乱すほどではないという。
冒頭にも書いたとおり、朝の出勤もゆったりで、登校した子どもたちが始業まで校庭で遊んでいるのを見守るyard dutyが割当たっていなければ、始業15分前の8時頃出勤してくるという。
専門教科である外国語の授業以外に、担任業務などはないのか尋ねると、出欠の確認と理由のとりまとめや、問題行動が起きたときの対応、家庭との連絡などの業務分担はあるらしい。ただし、日本の小学校教員のように、すべての教科について指導に当たるという意味の担任業務はないし、そのような資格(qualification)を持っていないのでできない(しない)という。
専科や担任を問わず、担当した授業の生徒の出欠や遅刻とその理由は、オンラインにあるシステムで共有する体制になっている。実際に、1時間目の出欠遅刻について記入をしながら、システムについて説明してくれた。
現在使っている情報共有システムは、大手2種類のうちの一つで、Irene先生のお子さんが学校に行っていた頃は、保護者としてもう一つのシステムを使っていたという。出欠遅刻以外に、体調や行動の様子など、かなり細かい情報を担当教員全員で伝達共有できるようになっており、必要ならばシステムから家庭にも連絡が送信される機能もあるので、教員は自分のメールアドレスや電話番号などを公開する必要がないという。もちろんネットワークにつながっているので、学校外からも利用可能だ。
授業をしながら、しかも授業が終わったらすぐに帰るのに、記入の作業時間は取れるのかと尋ねると、今のような空き時間に記入したり、授業中のちょっとした空き時間(生徒が作業中)などでささっと済ませてしまうという。やはり、学校や社会全体に行き届いた「ゆとり」を感じる。
こういう「テクノロジー」は苦手な先生はいないのか、聞いてみた。もちろん、ご自分も含めて新しいものは苦手だという教師は多いが、必要な研修は提供されるし、みな利用の意義と便利さを理解しているので、しっかりと研修して使っているという。
保護者との関わり方について、日本では学校や教師に対する不信感が高まっていて、どちらかというと良い関係が築きにくくなっているが、フィンランドではどうなのか?
確かに、希に関係がこじれるケースもないことはないが、おおむね学校や教師に対する信頼は厚いし、家庭での教育の責任感を持っている親が多いので、子どもの行動に問題があれば、互いにできることを冷静に意見交換できる体制だという。
いじめについて尋ねると、あいにくいじめも存在するとのこと。ネットで不本意な形で写真を掲載するなどが多いらしい。学校や教師としてどんな対応をするのか聞くと、もちろんできることは手を尽くすが、学校や教師にできることには自ずと限界があるし、いじめ問題は学校が全面的に責任を負うべきことではない、という冷静で割り切った考え方だった。
3時間目:9年生英語
授業の概略
このクラスは男子4名女子7名の11人。うちやんちゃっぽく見える男子2名は揃って遅刻。
同じ9年生の授業でも、当然クラスごとに進度が異なる。このクラスの9年生の授業では、既に1限で扱ったリーディングのところは終わっているらしく、ワークブックを使って文法的なまとめと練習が中心の授業だった。
1時間目の授業を観ながら、あのレベルに至るまでに、一体基本的な事項はどうやって教え積み上げられて来るのだろうか、と疑問に思っていたところだった。やり方も別に変わったものではなく、全般的な説明を母語で行った後、例文の音声を聞かせ、文の意味を母語で確認し、生徒を指名して答えを確認。
続いて、穴埋めの練習課題に取り組ませた。この間、教師は教室を回ってモニターしたり、生徒の質問に答えたり、アドバイスをしたりしていたが、母語も混じっていたが、時折英語を使ってもいた。遅刻男子のひとりは、途中Twitterの画面を開いていてたしなめられていた。
しばらく時間を取ったところで、練習課題の例文を全体でリピート練習し、その後ペアでも読みの練習を行った。
最後のまとめとして,教科書に戻り、リーディング課題に沿った練習タスクにペアで取り組ませ、授業が終わった。
文法項目の扱いについて
興味深いのは、リーディングでは内容も結構盛りだくさんで分量も多かったのに、ここでフォーカスされている文法項目はfew/littleなどの使い分けという、日本ではそれほどレベルの高い扱いのものではないこと。
あくまで推論だが、日本に比べて、文法的な新出事項がリーディングなどレッスン全体に占める「存在感」が薄いのではないだろうか。
日本の教材だと、fewとlittleの使い分けがポイントになっていると、分量も極度に少ないテキスト本文はその二つを提示するために存在し、読んで楽しく知的関心が引かれるような内容になっていない。また、一度出てきたポイントが複数のユニットにわたってあちこちで繰り返し使われるのではなく、ひどい場合には二度と出てこなかったりする。
フィンランドの教材では、あるポイントについて、それまでも何度か出てきたタイミングでこのようなまとめを準備し、意識的な学習を促し、さらに続くユニットでも幾度も出てくるようになっている。ユニット全体が、一つの文法事項に振り回されていない。
4時限目:9年生英語
このクラスは、出席者は男子4名女子6名の10名で、4名が欠席。既にイースター休暇の先取りで,家族旅行などに行ってしまった生徒が数名とか。
まずは宿題の確認。スクリーンに正答を提示し、各自答えを確認しながら、ペアで関連事項について話し合う。フィンランド語でお話に興じているペアに近づいて見てみると、宿題はちゃんとやってきている。Irene先生に聞くと、答え合わせをした上で、内容について話をしていることが多いという。
その後、教科書のp. 131にあるRain Forestsに関するリーディングに取り組む。デジタル教材を使ってテキストをハイライトしながら音声を聞かせ、その後ペアで1文ずつ交互に音読。さらに内容についてペアで確認した。内容理解の確認では、ワークブックに載っている本文の単語リスト(英語とフィンランドの対訳)を頼りにしながら、互いに確認し合っていた。
ペアでの確認作業にしばらく時間を取った後、クイズ形式になっている内容理解確認課題に取り組む。The Green Quizという、OxfordとCambridgeの学生がクイズで競い合うという設定で、単にTrue-Falseの問題ではなく、かなりまとまった量の音声を聞いて判断する作りになっていて、聞いていて楽しいものだった。
答えの確認では、生徒に解答を促すと、かなり多くの生徒が挙手をして答えていた。フィンランド人は恥ずかしがり屋で人前で話すのは苦手だ、とはよく聞くが、そういう印象はあまり感じない積極的な様子だった。
5時限目:7年生英語
Juhannuskylaでは最下学年である7年生の授業。このクラスは男子10名女子7名の、「大きなクラス」。
まずは宿題のノートチェック。イギリスについてのリーディングに基づいて、各自ノートにポスターを描いてくる課題。仲間の作品を見ながら、互いに論評。女子二人とグループになっていた男子が、女子に対して手厳しいコメントを述べていたが、すべて英語だったのは驚いた。10分程度時間を取って、ノートを回収した。
ウォーミングアップとして、教科書にある夏の風景の写真について仲間と英語で会話を行った。最前列にいた男子がどうしても作業に集中できず、やむなく他の席に移動させられていた。
続いて、本時のトピックであるclothesに関する語の導入を行った。絵を提示しながらリピートして、かなりの語数を扱った。生徒の多くも特に困る様子もなく、ある程度正しい発音で繰り返していた。それから、ペアで協力して、導入されたすべての語をフィンランド語で確認。
次に、ワークブックにある課題を、ペアで交互に質問と答えを言いながら取り組んだ。このような自由度の高い課題の中では、生徒たちにとっては発表語彙としてかなり定着している英語の語句や文構造を用いており、しかもレパートリーとしてかなり豊かであった。
最後に、いろいろな人物について説明を英語で聞き、それを絵として書き込む課題に取り組んだ。
その後、宿題を指示して授業は終了した。
全体的な印象
当然だが、9年生に比べると7年生はやや幼さが感じられる。ちょうど、日本の中1と中3に相当する学年差。指導するIrene先生も、9年生の授業のときよりも動き回り、忙しく生徒への対応をしている様子だった。
それでも、7年生が持っている英語の発表能力はかなり高度で、ペアでの話し合いでもほとんど英語で通している生徒も多く見られた。おそらく、3年生からの授業でかなりの力が蓄積されてきていると思われる。低学年での授業の様子を見てみたい。
6時限目:9年生英語(インタビューテスト続き)
この時間は、前回から実施している、ペアで行うインタビュー形式のオーラルテストの後半であった。インタビューが教室外のホールで個別に行われている間、教室内の生徒はそれぞれの作業に取り組むという展開。インタビューを見に行って邪魔するより、教室に残って生徒を観察することにした。
初めのうちは不規則動詞の練習問題をやる生徒、好きなファンタジー小説の紹介ポスターを書く生徒、フランスや米国へ留学予定のことをポスターに書く生徒など、それぞれ集中していたが、後半になると多少息抜きをする生徒も出てきた。
全体的な印象
生徒たちの様子
学年が下に行くにつれて、生徒との関わり方も子どもに寄り添う感じで、上に行くほど成熟した個人として尊重した距離感を持って対応するという印象だった。
日本の教室、特に自由な席に座れる大学の授業では、どこに座るかによって生徒の性格やクラス内での地位や交友関係が表れるが、フィンランドの教室でも同様である。
教室環境
すべての教室は見ていないが、参観した授業で使われた教室はいずれも24席程度の規模で、日本の教室よりも若干小さめだった。クラスの平均的な人数は十数名なので、生徒たちは好きな位置の席にパラパラと座っている感じだった。
どの教室にも、天井吊り下げのプロジェクタとスクリーン、黒板が配備され、教卓にはPCと教材提示装置が備わっている。音声は教室に据え付けられたスピーカーから出力可能で、その調整も教卓から行えるようになっている。
教師の英語力
今回見学した7年生と9年生の授業では、英語・母語使用の割合もかなり異なっていたが、いずれにしても教師の英語力はかなり高く、発音もまったく申し分ないクオリティであった。
それは、9年生の英語授業をこなすのに充分と言うだけでなく、授業前後でのいろいろな質疑応答や、教育について説明してくれるときの英語も相当流ちょうで高いレベルの英語力だということで、その上で、学年に応じて英語の使用割合やレベルを上手に調整しているようであった。たとえて言うなら、高馬力の車で敢えてゆったり控えめに走っているという「余裕」が感じ取れた。
教材構成と授業展開
既習レベルまでの英語を使って、かなりの分量のインプットを浴びせる構成になっている。なにしろ、9年生用の教科書本体だけでも290頁以上あり、それと同じくらいの頁数のワークブックが付属する。
そして、浴びせかけたすべてをいっぺんに吸収させようとせず、繰り返し何度も浴びせて、だんだんと吸収されていけばよいという「余裕」を感じさせる構成になっている。
授業展開のテンポも、自分から見るとゆったりと感じられた。50分授業を分刻みで計画し、ピリピリしながら進めていくことが多い日本の授業と好対照である。
生徒たちも、指示されたことは結構さっさとこなし、その後は関連したことについて母語で話を続けていることが多い。それで全員が終わった当たりで次の展開に移るというゆったりとした流れが印象的だった。