ビリヤードに興味のない人にとってはあまり興味のない話かもしれませんが、書き記しておこうと思います。
昨年の夏、学会と現地打ち合わせでフィンランドを訪問したついでに、ビリヤード事情も調査してきました。ただの遊びと言えばそれまでですが、自分にとっては大事な趣味のひとつなので、翌年度に予定されていた在外研究に備えて見ておこうと思ったわけです。
私がやるビリヤードはキャロムビリヤードという種目で、テーブルに穴(ポケット)はなく、ボールは3つで、自分以外の二つに当てれば続けて突くことができ、早く持ち点を突ききった方が勝ちという種目です。四つ球はほぼ日本と韓国のみで見られる種目です。
フィンランドには残念ながらこの種目をプレーできる場所は、全国でも1,2カ所しかないということが、事前の調査でわかっていました。ただの遊技場ではなく、まじめにやっているお店にメールで連絡を取り、状況を教えてもらいました(そこまでするか!)。
そのうちの一つが、ヘルシンキから電車とバスを乗り継いで1時間半くらいのところにある、Espooという町にあると言うことがわかり、早速そこのメンバーに連絡を取ったところ、訪問を受け入れてくれるという連絡をもらいました。ここはお店と言うより、愛好家が集まって自分たちで倶楽部を運営しているという珍しい形態のビリヤード場でした。
行ってみると、あたりはどう見ても大きな工場が建ち並ぶ工場地帯。でも住所に間違いはないし、グーグル先生も自信満々で表示している。気持ちを奮い起こして工場の中に進んでいくと、倶楽部の看板を発見して一安心。
それでも、小さな看板があるだけで、お客を迎えるというような一般店舗のような表示は一切ない、工場二階のオフィスのドアのようなところの呼び鈴を押すと、話が通っているらしく、開錠の音。ドアを開けると中は別世界。
一昔前の日本でも流行った、プールバーのような雰囲気の広いフロアに、ポケットテーブル3台、スヌーカーテーブル1台、大台(ヨーロッパの公式サイズのテーブル)が2台、そして後述するフィンランドを中心として見られる独特のKaiser(カイサー)という種目のテーブルが3台。
ビジター用の記録ノートに氏名を記入すると、テーブルのカバーを外し、ライトをつけてくれました。
3クッションやフリーゲームをプレーする通常のキャロムテーブルのコンディションは、ベストとは言えないけれど、プレーには問題ないレベル。ボールが汚れていましたが、後からプレーしたメンバーが自分でワックスかけてきれいにしてくれました。
連絡していたメンバーは都合がつかなかったので、代わりに相手してくれることになっていたPaulという青年が到着。彼は普段は3クッションしかやらないということでしたが、まずはフリーゲームをプレー。その後、1回クッションに入れなければいけないという制約があるバンドゲームを、続いて彼の種目の3クッションをプレーしました。
せっかくなので、フィンランド独特のKaiserという種目のルールを教えてもらい、やってみました。
テーブルは大台と同じ10フィートでしたが、テーブルの高さはちょっと高くなってました。ちなみに、スヌーカーは大台よりやや大きい11フィート8.5インチです。
ボールはキャロムと同じサイズのボールを使いますが、先攻後攻の番号が振られた白い手玉が2つ、赤ボール2つ、黄ボールが1つ、合計5個のボールを使用します。
9ボールと似たようなポケットがコーナーとサイドに合計6カ所ありますが、9ボールのようにポケットサイドが開いた入れやすい形状ではなく、むしろ絞ってあるような感じで、幅もボールがギリギリで入るシビアな形状です。
サーブのポジションは、黄色がセンター、赤が左右、自分の手玉はサービスエリア(2ポイントラインより手前)、相手の手玉はセンターラインと、反対側の2ポイントラインの間の任意の位置に配置されます。
サーブの配置から黄色を左コーナーに入れる練習をしましたが、正面に手玉を置いてショットしても、なかなか入りませんでした。それほどポケットの大きさがシビア。
ゲームは、通常のポケットビリヤードと同様、順番に突き、上手くいけば連続して突くという手順で進めていきます。基本は、相手の手玉を含めてボールをポケットに入れれば得点となりますが、大きな違いは、ポケットの位置と、ポケットしてから自分の手玉が他のボールに当たったかどうか(キャロムしたかどうか)によって、細かく得点が規定されています。黄色ボールは、同一イニング中は、他のボールを落とすまではサイドポケットには連続して入れることは許されないなど、いろいろ細かいルールもあるようです。それで、60点を先取した方が勝ちとなります。
ポケットされたボールは、手玉以外はサーブと同じ所定の位置に戻すことになっています。ポケットされた手玉は、攻守交代のときにサービスエリアの任意の位置に戻してプレーをスタートします。
キャロムを狙って高得点を目指すと、強さや撞点、ひねりなども使うことになり、どうしてもポケットショットの精度が落ちます。その兼ね合いと駆け引き(セーフティーショットもあり)をしながら進めていくゲームで、奥が深く面白いが、イライラするゲームだと、Paulも言っていました。この倶楽部のメンバーには、世界選手権を何度も取っている有名プレーヤーもいるそうです。