教育実習訪問キャラバン2018鹿児島編

今年度は、どういうわけか、遠方の実習生が北と南にくっきり分かれた。最北の青森県大間に靜先生と二人で行く予定だったのは、実習校の行事の都合で授業がなくなったため、やむなく中止。

もう一人の青森の実習生は靜先生が(ブログ参照)、鹿児島は私が担当することに。偶然にも、鹿児島の学生二人は、同じ高校の出身。一人は母校の高校で、もう一人は母校の市立中学校で実習に取り組んだ。

結論から言うと、改善すべき点は多々あれど(実習生としては当たり前)、二人とも昨年度教科教育法の授業でしつこく指導したポイントをきちんと押さえた、しっかりした授業を見せてくれて、鹿児島まで飛んできた甲斐があった。

高校の授業では、部活に力を入れている男子生徒ばかり49名が詰まった教室で、よく生徒に声を出させた授業をしていた。

冒頭の10分間で靜先生直伝の歌を手際よく扱い、でかい男子生徒たちから太い声を引き出して歌わせていた。導入部分では、教科書のダイアログの理解に必要な内容を、生徒に理解可能な英語を使ってやりとりしながら、板書も工夫して上手に導入していた。教師のモデルリーディングに続き、穴埋め式のハンドアウトを使って手際よくダイアログの説明をしたあと、コーラスとバズで音読練習し、個人を指名して1文ずつ読ませた。まとめとして、(この段階でやるのが妥当かどうかはさておき)英語のQAで内容理解の確認を行って締めくくった。

課題としては、リピートでは相当声が出ているのに、個人読みになると読めなくなってしまうという生徒の症状から、文字と音の結びつけを意識した導入と練習方法を増やして、自信を持って個人読みできるように導いていくようアドバイスした。

体育系の学生は、自分の身体をイメージ通りに動かすことに長けているので、教師のモデルを聞いて、その通りの音を出すのが驚くほどうまい。だから、ちょっとでも教師がおかしな発音をすると、それを忠実に再現してくれる。実際、実習生も自分がおかしなアクセントを生徒が再現しているのを聞いて誤りに気づき、すぐに訂正できて救われていた。

この高校に着いたとき、来客を受け付けるホールの受付は二人の生徒が担当していたのだが、聞いてみると受付実習として年に一度、授業は免除されて丸一日来客の対応や連絡などに当たるのだという。なかなか思い切った指導だが、生徒に聞くと、授業よりも緊張する仕事だという。いい学習の機会になっているようだ。

駅前のとんかつ屋で鹿児島黒豚を食し(今回は食レポ封印)、隣の市の中学校へ。かなり早く着いてしまったが、駅周辺には何もないので、駅の待合室で仕事して時間調整。

駅から徒歩15分ほどの中学校に着くと、管理職の先生が出迎えてくださった。うかがうと、もともとは東京出身で、本当に教育がしたいなら島へ行け、という恩師のアドバイスで北海道、鹿児島の教員採用を受験して赴任、そしてこちらで骨を埋めるに至ったという。

さて、参観したのは一クラス18名の、中学1年の授業。実習中に担当した一般動詞を使った、締めくくりのコミュニケーション活動がメイン。

ペアやクラス全体で行う活動の場合、始める前にきちんと趣旨と指示を徹底し、活動に必要な事項について確認や準備運動をしておくこと、そして活動の最後にどのようなまとめをするかが肝なる。

そのことは前年度の教科教育法の授業で繰り返し力説したことだったので、(多分に指導教諭のご指導よるところも多いだろうが)それを踏まえた構成になっていたのが私としては嬉しいこととだった(もちろん、これから書くように、改善が求められる点も多いのは言わずもがな)。

生徒たちもとても純朴で、よく実習生の指導について行っていた。東京ではほとんどお国のアクセントを見せない学生が、生徒たちに語りかけるときはすっかり土地の言葉になっているのが印象的だった。

授業の前の実習生との会話で、既に終えた研究授業の様子を聞いてみると、参観者からは教師の表情が硬かったことが指摘されたらしい。彼女は私のゼミ生なのでよく知っているのだが、決して引っ込み思案でも堅苦しい人物でもなく、話せば気さくなのだが、そう見えてしまうのもわからないでもない。そこで、教師はサービス業、思い切って営業スマイル振りまけ、でないと、生徒も乗ってこないし、教師の表情が硬ければ無用に緊張してしまう、ということを伝えた。

事後指導では、帯活動で扱っている単語リストの学習・復習方法や、活動前の準備運動の改善点、活動中のモニター指導でも眼のつけどころ、ワークシート作成についての工夫についてアドバイスした。

授業冒頭の帯活動では、配布してある単語リストの読み方をコーラスで復習したが、横から見ていると数名の生徒が手もとの文字を見ずに反復して空読みになっていた。これを防ぐには、せっかく用意されているプロジェクタを使ってスライドを提示しながら行えば良い。

活動で使う動詞について手早く確認復習するために単語カードを用いていたが、A4コピー用紙を使ったためペラペラ、しかも黒板にはるマグネットも足りないという状況なのは論外として、意味と読みを同時に扱おうとしたため復習がわかりにくく散漫になった。まずは語を見せながら意味を確認し、その後に手早く読み方を確認する方がメリハリがついたはずだ。

活動中、実習生は生徒の中をうろうろしながらモニターしていたのだが、せっかくなので活動に参加し、生徒にどんどん質問をぶつけながら定着具合をモニターするべきだった。

活動語のまとめで書かせたワークシートでは記入欄が下線一本だったので、生徒によっては文字が躍ってしまっていた。中1のこの時期では、少なくとも3本は線を引いてあげるべきことを伝えた。

こうして実習生が生まれ育ったところに出掛け、地元での様子を観察したり、担任だった先生と直接会ってお話をすることで、学生についてもいろいろ情報交換でき、学生たちの指導上でも多くの情報が得られた。

美味しいものも食べ、焼酎や温泉も堪能しましたけど、全部勤務時間外で自腹です。

桜島をバックに。もちろん、実習校に出で立ちでは行っていません。

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