東京下町のど真ん中にある実家のすぐそばには鳶職の家があって、多くの鳶職人が出入りしていました。
祭りや年末年始など行事の際には、ダボシャツ、膝まで膨らんだニッカポッカで、その下はくるぶしまでゲートルを巻き、地下足袋、頭にはきりりとハチマキを締め、子どもながらにかっこいいなと憧れたものです。
そこで働く鳶の職人さんたちにはずいぶんと可愛がってもらい、子どもたちも「かしら、かしら」と呼んでしたっていました。祭りの神輿にもついていてくれて、「頭、今何時かしら?」とかくだらないことを言ってからかったり、頭の隙をついて神輿を拉致して大通りの真ん中に出て、都電を止めて喜んでいたものです。
そんなカシラたちも、朝通勤してくるときにはシャキッとした背広を着ていたのをよく覚えています。ニッカポッカやダボシャツで通勤してくるカシラは皆無でした。
ひるがえって、最近の通勤電車で目に付くのは、作業着のまま通勤をする鳶職や作業員です。一応は綺麗に洗濯してあるのでしょうけど、それでも落ちない汚れがあちこちついていたり、ペンキだらけの作業着で満員電車で一緒になるのは気持ちのいいものではありません。
それに、ニッカポッカの形や着こなしがどうも変です。流行なのでしょうけど、今の鳶が履いているのは、膝の周りがゆったりしているのではなく、足首のあたりまでダボダボのニッカポッカで、もちろんゲートルなど巻いている人はいません。
本来は膝が動きやすく、足首の裾が引っかかったりしないよう、足も疲れにくいようにゲートルを巻き巻いていたのでしょうけど、今風のものはそういう意味ではひっかかりや巻き込みの危険性が高いデザインなんじゃないでしょうか。