前川喜平氏、寺脇研氏、望月衣塑子氏によるトークイベント「「当たり前」を問う勇気」に行ってきました。これは、角川書店が出版物のPRを兼ねたもので、本社ビルのこじんまりとした会場で、アットホームな雰囲気で行われたトークイベントでした。
望月記者の講演は何度か聞きに行ったことがありましたが、「生」前川さんは今回が初めて。司会役はミスターゆとりこと、寺脇研氏。寺脇氏は前川さんの共著者でもあり、文科省時代の先輩後輩にあたる関係で、前川さんと望月記者をつないだのも寺脇氏だそうです。
前川さんは、記者会見や参考人質問でしか見たことがなかったので、キリッと真面目な印象しかありませんでしたが、とてもオヤジギャグ好きで、気さくな感じでした。
印象に残った発言としては、文科省を辞して野に下って以来、さまざまなしがらみがら解放され、とてもすがすがしく、自由を謳歌している気分で、事務次官時代はいかに発言が制約されていたかがうかがわれました。参考人として発言したことについてさぞかし勇気が必要だったのではと問われ、かつて事務次官として答弁に立ったのに比べると、言ってはいけないことや気兼ねもまったくないので、自分が知っていることをありのままにしゃべればよく、とても楽な心持ちだったそうです。
参考人質問のとき議場にいた人はみな知った人ばかりで、そういう意味でも緊張もなかったのが、ただ一つ、元愛媛県知事の加戸氏と二人で控室で昼食を取ることになったのは気まずかったそうです。
仮に現職のまま加計学園問題について答弁することになったとしたら?という問いには、それこそ面従腹背で、政権が望むとおりの答弁をしておきながら、裏ではそれを覆すための情報をメディアにリークしていたかもしれない、と答えていました。
これからの教育についての関心事を聞かれると、道徳の教科化について懸念を示し、現在検定を通っている教科書の中には、本来の道徳科が目指しているような、答えがないような問題にどのように対応するか、考えを持つかに反するような、悪しき正解主義が含まれている物があるというエピソードを、「正しいあいさつの仕方」を例に挙げて紹介していました。
望月記者のお子さんも来年から小学校に上がるそうで、保護者としてもどんな教科書か、きちんと見ておいた方がいいですよ、と前川さん。望月記者には、道徳科や小学校の英語教育、入試改革など、どうも商人の利益誘導臭がプンプンする問題に切り込む本をまとめてほしいところです。
前川さんは、学習指導要領は法的拘束力を持つものなのでどうしようもないが、その内容と現実の状況をギリギリのところで何とかつなごうとする涙ぐましい努力が、指導要領解説書ににじみ出ているということも触れていました。
今後、悪い方向に流されないためにはどんなことを心にとめて置くべきかについては、道元の「眼横鼻直」(がんのうびちょく)という言葉を挙げ、あれほどの名僧でも中国への遊学を通じて、当たり前のことが当たり前であることにようやく気づいた、我々も当たり前のことをしっかりと認識する必要がある、と言っていました。
憧れの人物は、意外にも、迷わずチェ・ゲバラを挙げ、自分の生き方とはまったく異なるけれども、「何しろ、かっこいい!」と絶賛していました。