ミッション水球紙切完了!

夕方5時から広小路で人と会う用事があったので、鈴本演芸場のプログラムをチェックすると、ちょうど正楽師匠による紙切りが予定されていました。

この時期なら客の入りもそれほど多くないだろうし競争率も低い、ちょっと変わったお題でも切ってくれる可能性が高いことが予想されたので、長年懸案であったミッション水球紙切を決行することに。

ご存じない方のために簡単に説明すると、紙切りというのは、客の注文に応えて、鋏だけで一枚の紙を切り抜き絵を描くという伝統芸能。登壇すると、まずはご挨拶代わりにと言いながら、時節などに合わせた絵柄を可笑しい語りを交えながら切ていきます。

切った切り絵を客に見せるとき、先々週に浅草演芸ホールで観た弟子の二楽さんは、バックライト装備のハイカラなボードに置いて客に見せますが、正楽師匠は今では懐かしのOHPで舞台の後方壁面に大きく投影します。

出来上がった最初の切り絵をお土産として希望者に差し上げた後、「それではご注文にお応えして…」と師匠が言うときが勝負の瞬間。ここで間髪入れずに希望を叫び、希望を主張します。そういう原始的かつ熾烈な方法で注文を取り、採用されたお題に合わせた絵を切ってくれます。

客席からは、たいてい数名の常連や寄席好きから声がかかります。時節ネタを求めるものもあれば、ウケ狙いの意地悪難題を叫ぶものもいます。以前、「夜のカラス」と叫んで無視されていた客がいました。私は遭遇したことありませんが、「豆腐!」などという意地悪難題には、鋏を入れずに四角いままの紙を渡しつつ、「はい、木綿豆腐」と切り返され、追い打ちをかけるように「あ、こっちは絹ごしね」ともう一枚渡されるという公開処刑もあるとか。

さて、本日の正楽師匠の出番は、中入り後、ホームランの漫才に続き、落語ふた席の後、トリの落語の前。ホームランによる漫才までは大笑いしながら聞いていられましたが、その後は迫る勝負の瞬間に向けて心臓バクバク喉カラカラで、落語どころではありませんでした。

見回すと、ウィークデーにもかかわらず暇な奴が多いようで(自分は棚に上げ)、いくつか希望の掛け声がかかりそうな空気が感じられました。ここはタイミングだけでの勝負は厳しいと判断し、正楽師匠登場の瞬間にも勝負を仕掛けることにしました。師匠が出てきた瞬間、「よっ、ま〜ってましたっ!!」と、でかいプールで水球の応援するときに出す声量で声をかけると、師匠が軽くのけぞってしっかり反応。よっしゃ。好感触!

ご挨拶の一枚が終わり、「それではごちゅうもん」という言葉の、「も」の一瞬に神経を集中。その瞬間、会場から同時に三つの掛け声。二つは常識的な時節ネタで「敬老の日」と「秋の名月」、それをかき消すような爆音で「すいきゅう〜〜〜!!!」。

師匠は最初、コンマ3秒早かった「敬老の日」に反応しましたが、次の瞬間、出囃子をかき消した聞き覚えのある声にピクッと反応、まっすぐ私を見ながら、すいすいと泳ぐ仕草をしつつ、「あの水球ね?」と受けてくださいました。作成大成功。

切りながら、「どうやって切ったらいいものか、考えながら切ってます〜」といつもの調子で身体を揺らせ、「水球というのは、ねっ、水中の格闘技と言われるほどに、ねっ、激しい競技で…」などと解説を入れながら切ってくださいました。

正直、師匠がどこまで水球を知っているかまったくわからない中での注文だったので、仕上がりがどうなるか不安でしたが、ゴール前でのシュート&セーブの様子をうまく切り描いていました。まあ、シュート時の腕の躍動感は仕方ないとしても、水面から飛び出している様子や、がっちりとした上半身も細かく切れています。きっと生の試合はほとんどご覧になったことはないでしょうに、いきなり注文受けてあっというまに鋏一本で切り描いてしまうのは驚嘆です。

2016-09-15-21-24-41お世話になった水球関係者に贈るべく、帰りに額と台紙を買い求め、入れてみました。台紙は筑波の藤色です。

お持ち帰り用に、切り絵作品が描かれた特製の袋をつけてくださいました。

2016-09-15-21-25-07

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