教科教育法の後期の授業では、中学高校の検定教科書を教材として、ひとり30分の模擬授業をしてもらっています。
これらの教材は、前期の授業では宿題として暗写を課したり、授業時間内の音声トレーニングに使用したものです。
時間が短めなので、扱う範囲を限定したり、活動を短めに切り上げたりしてもいいことにしていますが、基本的には通常の授業1コマ分の展開に準じて指導案を作成し、授業実演してもらいます。
開始前に、教材が対象としている学年や、前時の活動や宿題などの想定を確認します。生徒役となる教師役以外の学生は、その前提に応じた反応と行動を求め、ありがちな間違いも含めて演じてもらうように指示しています。
一つの授業実演後に、5分程度記録と総評を書く時間を取り、それから10分程度簡潔な助言をします。授業時間最後には、記録と総評を記した授業観察メモを写メに取り、原本を提出してもらいます。
マイクロティーチングの映像は限定公開の形でYouTubeにアップロードするので、学生たちには自分の授業観察メモと映像を参考にしながら、各授業実演についてのレポートをオンラインの掲示板に授業後に書き込むことを宿題としています。
レポートは、項目ごとに簡潔に参考になった点や改善すべき点について、該当部分のタイムスタンプとともに書き込むように求めています。全員からレポートが出そろったところで、私から補足とまとめを書き込みます。
掲示板には、Moodleの一般QAタイプのフォーラム機能を使用しています。このタイプのフォーラムでは、自分が書き込みをしてから30分経過するまでは他のメンバーの書き込みは見えないようになっています。レポート提出後には、他のメンバーからのレポートが閲覧できるようになります。
毎回の実演とレポートを積み重ねて感じるのは、仲間の実演や掲示板で共有されるコメントから、少しずつではあっても各自が吸収し、授業を見る眼や気をつけるポイントについての知識が蓄積されているということです。実際にやってみると同じ失敗をしてしまうことは多いのですが、回を重ねるごとに、そういう失敗を感知できる「授業眼」が育っていると感じます。
授業者は、映像を確認しながら、自分自身のすべての発話の書き起こしと誤り部分の修正をするとともに、指示や発話、手順などについての問題点などの分析を、仲間のレポートも参考にしながらまとめ、自己分析レポートとして2週間以内に提出してもらいます。
自分自身の授業映像を見るのは照れくさいだけでなく、いろいろ失敗をやらかしている様子を直視しなければならず、穴があったら入りたい心境のようで、自己分析レポートのための書き起こしも、一回にまとめてできるほど気持ちが続かないと、学生のひとりが言っていました。
学年末の課題として、仲間の実践やコメントも参考にしながら、自分の経験に基づいた「私の授業マニュアル」というレポートをまとめてもらおうと思っています。