ここ二十数年、ある学会のホームページ運営を担当している。特にITに関連した団体ではないが、コンピュータに通じた数名のメンバーが協力してのスタートだった。ドメイン名を登録し、まだ国内でのホスティングがとても高額だった頃、米国の会社と契約してHPを立ち上げた。やがて他のメンバーが疎遠になり、ウェブの管理運営はほとんど自分に任されてきた。
誤解ないように書いておくと、この学会HPサポートの業務は、まったくのボランティア、一銭ももらっていない。
はじめのうちは、いわゆるホームページ作成ソフトを使い、スタティックな管理方法だったが、そういう方法で自分ひとりで面倒見るには限界があるとわかっていたので、できるだけ一般の研究員も協力分担してコンテンツの更新などを行えるような動的な管理システムを早い時期から採用した。
このシステムでは、機能を必要に応じてモジュールとして組み込めるという特徴がある。もっとも活躍している機能は、講習会などの申し込み受付機能だ。それまでは、郵便やファックスで送られてくる申込書を事務室が手作業で処理していた。
財政が逼迫して予算削減が叫ばれる中、ならばニュースレターのような通信を郵送ではなくネットで閲覧してもらうようにしたらと最初に提案したのは、21世紀になって早い頃だったが、当初は印刷物としての配信への郷愁とこだわりが強く、あっさり却下された。その後しばらく放っておいた提案だが、ようやく機が熟してきたのか、数年前に再度提案を求められ、動き始めた。
ウェブを使うことがかなり一般人に浸透し、ユーザとしての目が肥えてくるにつれ、やがて学会のHPに対しても、見にくいとか使いにくいとか、いろいろ不満や要望が突きつけられるようになってきた。
そういう声を受けて対応していると、いくつかの共通点があることに気づく。もっとも顕著なのは、書かれていることを冷静に読み取って情報を引き出す・探す自己努力をしないという傾向である。
こちらも毎度同じ質問に対応するのは疲れるので、繰り返されるような質問はFAQとしてまとめているのだが、それすら見ずに衝動的な問い合わせメールをよこす。それに対して、こちらがどれほど自分の時間を割いて対応しなければならないか、想像すらできないらしい。
もう一つの傾向は、自分が何をしているのか明確な自覚と俯瞰的把握がなく、あれこれやっているうちに、よくわからないが、うまくできなかった、分けがわからない、というタイプ。「〜しようとしたがうまくいかない」という問い合わせに対応すると、「〜しようとした」ところが既にやり方が間違っていると言うことが多い。自分が分けもわかっていないことは棚に上げ、「わかりにくいから悪い」という結論を出す。
見かけやデザイン上の問題についての苦言や要望も多い。運営体制が盤石で予算も潤沢で余裕があるなら、見かけは美しく見やすい方がいいし、デザインもファンシーな方がいいだろう。技術的にはスタイルシートを工夫改善すれば何とか対応はできることはわかっているが、自分にはあまりそういう方面に興味がない上に、これから勉強して対応するのも余裕がない。何より、多少の見かけを我慢してもらっても、肝心の内容がちゃんと伝わるようになっていればいいではないかと思っている。
今やユーザは大手通販会社やウェブ検索サービスのページに慣れているので、見やすくきれいな表示や、至れり尽くせりな機能に慣れている。しかし、そういうサイトは、コンテンツの更新やユーザインタフェースの改良に膨大な資金を投入している。そういう部分への資金投入が売り上げに直結しているからである。
翻って、決して予算が潤沢とも言えず、人材もなく事業規模も大きいとは言えない地味な学会のホームページについて、見かけやデザイン上の改良をするために、多額の資金を投入するのが賢明なのかどうか。う〜む。。。