「小中学校の統廃合促進 文科省方針、60年ぶり基準変更(朝日新聞デジタル版)」という報道を見て感じたこと(記録のために、記事本文は末尾に引用してあります)。
私自身はこれまであまりこの問題には関わってこなかったのですが、どうも直感的にあまりいい感触はしないというのが正直なところです。
成長も著しく、人間関係も大きく変化し、親子関係でも複雑な時期、9年間節目なしというのは、どうなんだろうか。自分自身の経験でも、いろいろあった小学校での人間関係をリセットして中学校に臨めたのは、とても重要だったと思います。
小学校では、学年が進むにつれて子どもの社会性が育ち、高学年までにはいろいろ失敗したり経験を積む中で、仲間作りや友だちづきあいを学んでいきます。そこで学んだことを活かして、中学校で新しい仲間と仲間作りをやり直せるという貴重な機会になっていると思います。
私学では古くから小中一貫が多かったけれど、それはある一定レベルの教員を固定して、一貫した教育方針のもとでの実践。しかも、通学する側も望んで行くのだからいいとして、教員の質のばらつきも大きく、移動も頻繁、教育方針もぶれがちという公立学校では、問題が多いんじゃないかな。
通学距離も事実上不問になり、交通機関を利用した通学が前提となるような変更により、行きも帰りもすし詰め電車に揺られて通学する小学生が増え、下校後の子どもたちのコミュニティも分断されてしまうような状況が増えてしまうのではと危惧する。
しかし、いちばん気になるのが、この問題が教育的配慮から出てきたと言うより、あの財務省主導で、予算削減がもくろみで進められているのではないかと言うこと。財務省の試算も引用されているが、これだけ子どもと教育に大きな影響と問題を引き起こす可能性のある変更をしても、せいぜい300億円の削減。
あるもの減らしてしまうと、再び増やすのは大変。それに、目先の金のためにあれこれやると、その影響は20年30年後に必ず大きく返ってきます。
以下、記事の本文の引用:
文部科学省は25日、公立小中学校を統廃合する際の基準を約60年ぶりに見直す方針を決めた。小学校で4キロ以内、中学校で6キロ以内としている通学距離に加え、「おおむね1時間」と通学時間も示し、より遠くの学校と統合できるようにする。学級数別に対応例を示し、特に全校6学級未満の場合、統廃合も含めた検討を強く求める。
来年1月にも学校の適正配置についての「手引き」を公表する。市町村教委が判断する際の目安で、強制力はない。そのため、統廃合をした場合に国が財政支援する方針を盛り込み、後押しするという。
ただ、地域から学校がなくなることで人口減少が加速する恐れがあり、住民の反発も予想される。市町村教委が検討した結果、統合しない選択をするケースも少なくないとみられる。
統廃合の基準は、1956年に出された通知では、①12~18学級が標準②通学距離は小学校で4キロ、中学校で6キロが限度、とされてきたが、事実上、地元の判断にゆだねられてきた。少子化により地方で学校規模が縮小し、現在は、公立小中学校約3万校の約半数が標準の12学級を下回る。6学級未満も4千校を超える。
財務省の試算では、全校が12学級以上になるよう機械的に当てはめると、5千校ほど減るという。教員数は小学校だけで約1万8千人減を見込み、300億円以上が浮く計算だ。
新しい「手引き」では、これまで徒歩を前提にしていたが、2007年度の時点で約18万人がスクールバスを利用している現状を踏まえ、交通機関の利用も例示。統廃合の際に距離と時間のどちらを基準にするかは自治体の判断となり、通学圏を大きく広げることが可能になる。
12学級を下回るケースは、学級数別に、自治体が検討する際の考え方を示す。例えば、全校で6学級未満の小学校など違う学年が一緒に学ぶ場合は、速やかに統合を含めた対策を講じるよう求める。
一方、統合が不可能な地域も多いため、小規模のままで教育内容を充実する対策もあげる。小中の一体化を進めることや、インターネットを通じて他校と合同授業をすることなどを提案する。(高浜行人)