職場の同僚、靜先生がご立腹。理由は、松村昌紀編(2017)『タスク・ベースの英語指導 — TBLTの理解と実践』(大修館書店)という本の中での、靜先生による『英語授業の心・技・体』の引用され方。詳細は靜先生の下記ブログ記事をご参照ください:
- 松村昌紀編(2017)『タスク・ベースの英語指導 — TBLTの理解と実践』(大修館書店)にみられる、拙著のミスリーディングな引用に対する異議申し立て:編者および著者の見解を問う
- 著者の方、ていねいに確認してくださっているそうです
問題の箇所は、これ(同書、p. 43):
基本的に,ドリル活動や文法問題への解答などはかなり形式に重点を置いた指導である。流暢さは正確な言語使用ができるようになった後で求めるのが王道であるという考え(靜, 2009など)に基づけば,先に文法のトレーニングを行い,その後で流暢さを鍛えるような活動に移行するという手順が採用されることになる。しかし,言語表出の正確さが必ずしも流暢さより先に発達するとは言えないようである。
これはフォーカス・オン・フォームに関する部分で、accuracy vs fluencyについて、必ずしも一方が他方に優先することが効果的とはいえないということを書いてある部分の一節。
上の引用部分を素直に読めば、「文法的な形式操作がしっかりできるようになって初めて流暢さを鍛えるべし」と信ずる一派の代表選手として「靜,2009」が挙げられている、と解釈されるのが普通だろう。
しかし、引用されている靜先生の本全体で言わんとしていることはそうではないし、同じ学生たちを一緒に鍛え、その様子を間近で見ている私の目から見ても、そのように著しく指導上のバランス感覚を欠いたことを靜先生はなさっていないし、そういう考えをお持ちでもない。
なぜこのような「代表選手」に祭り上げられてしまったのかはよくわからないが、同じ学科で教職志望の学生たちを共に鍛えている担当者として、問題の本の中での描写は正しい姿ではないということを証言しておく。