Tammela学校
最初に訪問したJuhannuskyla学校は、7〜9年生の高学年対象の学校でしたが、2つめに訪問したTammela学校は1〜6年生までを対象とした学校です。
初日の4月16日(火)は朝から午後までほぼ終日Riika先生に密着して、3つの異なる学年の英語授業を見学してきました。
長くなりますが、この日に参観した3つの授業について報告します。
初日:4月16日(火)
あまり早く行ってはいけないと言うことは学習したので、ゆったりと歩いてちょうど7:55に到着。生徒の登校口らしきところが見つからず見回していると、先に教員らしき人が入っていったドアがありました。しかしオートロックで施錠されていたので、また誰かが通りかかるのを待って、事情を伝えて中に入れてもらいました。
まだRiikka先生は出勤前でしたが、教員ラウンジに温かく迎え入れられ、コーヒーをごちそうになりました。前日に伺ったJuhannuskylaよりもくつろぎスペースがゆったり広々とした、居心地のいいラウンジでした。皆さん授業10分前なのに、ソファーでリラックスしてコーヒー紅茶片手に歓談していました。
そうしているうちに、Riikka先生が自転車のヘルメットをかぶって現れ、ご挨拶。まだ生後3ヶ月のワンちゃんがいるらしく、それで手間取ってちょっと出勤が遅れてしまったとのこと。
一緒に教室に向かうと、登校後に外遊びをしていた生徒たちが校舎内に戻り、教室外の廊下の壁のフックに防寒着を掛け、帽子や手袋は棚に収めて授業の準備をしているところでした。
教室の鍵を開けると、子どもたちが入ってきました。教室に入るときには靴を脱ぐことになっているようで、生徒たちはみな靴下履きでしたが、教員は靴のままでOKとのことでした。
ビデオカメラを準備すると、ちょっと照れながらもカメラに向かってポーズを取ったりして、低学年独特の無邪気さと人懐こさを感じます。
この日のRiikka先生の時間割は次の通りでした:
- 5年生英語(第2外国語)
- 5年生英語(第2外国語)続き
- Kikatus 2(2年生の外国語入門)休講
- 空き
- 4年生英語(第2外国語)
- 4年生英語(第2外国語)続き
- 6年生英語(第1外国語)
1・2時限目:5年生英語
朝は2コマ続きの5年生の英語授業。
教室は、Riikka先生が英語の授業専用で使用しているもので、4人掛けのテーブルが6つ配置され、前方と中央の床面には,生徒が床に座って作業ができるようにカラフルなマットが敷いてある。周囲の壁には英語関係のポスターなどが貼ってあり、英語学習の雰囲気を盛り立てている。
あいさつ〜紹介
男子生徒がひとり遅れて入ってきたところで、先生が声をかけて授業開始。Juhannuskylaでのように、全員起立しての挨拶はない。
始業前にRiikka先生から生徒たちに紹介してもいいですか?と確認されていたので、先生から子どもたちに「今日はお客様がいます。どこから来て、何をしに来たのか、いつまでいるのかなど、お話を聞いてどのくらいわかるか、聞いてみましょう」と、英語に続いて母語でも補足した後、私から自己紹介。5年生は英語を学習し始めて3年目ということで、どの程度の英語力かわからず、様子を見ながら手探りで内容を調整して簡単に自己紹介しました。
終わるとRiikka先生が、”Show me how much you understood.”と、thumbs-up/downで子どもたちに示すよう促す。ほとんどの生徒が親指を上げ、わかった様子。
Riikka先生から、フィンランド語で私の自己紹介の内容について、確認の質問。生徒がフィンランド語で答える。opettaja(teacher)とかjapanista(Japanese)くらいしかキャッチできなかったが、ほぼすべて理解していたらしい。
その後、日本について知りたいことを何でも質問していいよと先生が水を向けると、早速手が上がる。子どもがフィンランド語で聞きたいことをRiikka先生に伝えると、英語でも手に負えそうな内容なら「自分で英語で聞いてごらん」と促す。”Is Japan a nice place?” ”Where do you live in Japan?” ”How many people live in Tokyo?”など、いろいろな質問が飛び出し、子どもたちの質問力や物事に対する関心の持ち方に感心した。
人口に対する答えでは、”About thirteen million”というべきところを”About one million”などと適当なことを言ってしまい,後で訂正する羽目に。Riikka先生から、「ね、もうたくさん人がいすぎて、ちょっとくらい違っても気にならないくらい一杯なのよ」などと、ユーモア溢れるフォローをされてしまった。
使用教科書
この授業で普段使用している教科書は、All Starsというシリーズの3。書店では約44ユーロ(付属のワークブックは別売で34ユーロ)で販売されている。あれだけの情報量と内容ならば、そのくらいの値段はやむを得ない。無償配布という甘い響きの政策の代償に、限られた国家予算でまかなうために異常な単価に抑えられている日本の検定教科書の価格が異常なだけである。言うまでもないことだが、教科書およびワークブックは、生徒にはすべて無償で配布されている(教員は各自購入しなければならないらしい)。
作業準備
この2コマ授業の残りの時間では、各自イギリスについて好きなテーマを決め、そのポスターを作成するというプロジェクトに取り組んでいた。教科書の中でイギリスに関する話題を学習したらしく、そこで読んだりしたことに基づいて、自分が興味のあるトピックを選んでネットなど情報収集をして、ポスターに仕上げるという活動。
私の紹介が終わると、Riikka先生はグループと前回までの作業の進み具合を確認して、別室に保管してあるラップトップコンピュータを取りに行くよう生徒に指示を出した。子どもたちはそれぞれ端末を持ってきてテキパキとログイン、作業を始めた。
先生からのはたらきかけ
トピックが決まっている子どもは、必要な情報をWikipediaなどから読み取ってポスターに入れる原稿を準備したり、必要な画像などを検索して取り込んで、Word上で自分のポスターに張り込んでいた。トピックが決まっていない子や、構成などを決めかねている子どもには、先生が適宜巡回して、英語で助け船を出している。よほど複雑なことでない限り、ほとんどは英語ではたらきかけをしていた。もちろん、先生が使っている英語は子どもたちの理解を超えているものではなく、巧みに語彙などを調整していたので、生徒たちも問題なく理解していたようである。
先生が時折私に補助的な説明をしに来てくれるときの英語と比べ、子どもたちに投げかけている英語では、明らかにコントロールがなされている。
トピックの選択も、子どもの興味関心だけでなく、まとめやすさや、ポスターとしての出来映えも考慮しながら、巧みに生徒を失敗の少なそうな方向に誘導していたように思う。
作業後半の添削指導
だんだんとポスターの構成や文案が決まってくると、先生はできあがった原稿を生徒と一緒に見ながら、修正の提案や表現の工夫などを、主に英語を使って推敲を行っていった。
意味がよくわからない部分では、”Do you mean that …?”などと英語で代弁し、生徒の言いたいことを確認していた。文法的な説明などでは、必要に応じて母語も上手に活用しながら添削を進めていた。
書くことがあまり得意でない生徒に対しては、しっかりとそばについて、時折いらだちを募らせて投げ出しそうになると、”Hey, take it easy, buddy. Write the text first and then edit it later. Don’t worry about the contents.”などと英語で励ましの言葉をかけていた。
かなり書ける子どもに対しては、細かな表現にも気を配った修正を提案していた。Big Benについて書いた原稿の中で、現在は鐘の修復中であるという記述の中で生徒がfixという動詞を使っていた。それに対して違和感を感じたのか、生徒が吸収できると判断したのか、renovateやremodelという候補も与え、辞書で確認してみるよう勧めていた。
これらの添削指導の中でも、教師の英語力の確かさ、語彙の豊富さ、文法的な判断能力の高さが感じられた。
おしまいのゲーム
二コマ目の終わりに近づいた頃、ラップトップを片付け、グループに分かれてCorner Gameと称する単語のゲームを行って授業を締めくくった。
生徒たちはグループの机の各コーナーに指を置き、先生が回ってきて英語を言ったら、その意味を母語で言う。正解なら次の角に移動する、というゲームであった。後半は母語から英語を言う順序に切り替え、教科書で読んだパッセージに出てきた単語から、key, map, ticket, toothbrush, towelなどを出題していた。combという単語では誰も答えられず困っていたのに対し、間髪入れずに”You use it when you brush your hair.”とヒントを出していた。基本的な単語を扱っていたので、私自身のフィンランド語の勉強にもなった。
スマートフォンの使用
女子のひとりが、ラップトップでは情報検索せず、ずっと自分のスマートフォンを使って作業していた。聞いてみると、家庭の申請があれば子どもは学校でスマートフォンを使用することが許されているらしい。実際、授業中に歯医者に行くことの念押しをする親からの電話に応答していた生徒もいた。
携帯電話について問題は起きないのか授業後に尋ねてみたら、ないことはないらしい。しかし、家庭からの要請もあるし、使えるものを禁じると言うことは権利の制約にもなるし、何よりも、禁じたり回収したりしようとしても、もとより徹底することも難しく、そこに浪費されるエネルギーも無視できない。ならば、できないこと、細かいことにはこだわらず、大事な本筋のことがきちんとなされる方に気を配る、という合理的な考え方らしい。
3時限目:Kikatus 2(休講)
3時間目は本来ならば、英語に限らず、外国語学習への導入のような活動を行うKikatus 2という授業だったが、2年生が校外学習で不在のために休講だった。そこで、昼食をとりにいったん大学に戻った。片道徒歩十分程度である。
大学から戻ってみると、ビデオ撮影について問題発生。最初の授業はカメラを回しつつ見学したが、昼休み中に現場の他の教員から懸念が示されたとのこと。既に市からは研究目的での撮影許可をもらっており、結局は後で誤解だったと判明したのだが、無理せずに以降の授業ではビデオ撮影は断念することに。日本の中学生に相当する学年対象のJuhannuskylaでは何の問題もなく撮影できたが、低年齢の生徒が多いTammelaでは神経質なのかもしれない。
ここからは映像記録はないため、メモと記憶を頼りに概略をまとめる。
5・6時間目:4年生英語
この日の朝は5年生の授業だったが、今度の二コマ連続授業は学年が一つ下がり4年生。3年生から正式な教科として学習し始めて2年目が終わろうとしている段階の生徒である。
あいさつ〜紹介
あいさつして授業が始まり、日本からの参観者がいることを簡単に紹介、ちょうど学習したという”What’s your favorite … ?”という表現を使ってグループごとに質問を考え、私にぶつけてきた。その後、日本語で何というか知りたい単語を質問するという指示にたくさんの手が挙がる。動物や数、あいさつなど。英語で質問する子もいたが、フィンランド語で質問する子もいて、先生が適宜通訳してくれたが、日本で学習していたkissa(猫)とkoira(犬)はわかったので直接回答。こんなところで学習した語が役立つとは思わなかった。なぜだかstingray(えい)に興味を持つ子がいたが、フィンランド語でeiは「いいえ」に相当すると知っていたのか?
教科書の復習
前時までに読んだという教科書のパッセージを読みながら復習。文末の終わり方に意識を向けるべく、文末の形式に応じていろいろな身体動作をするというphysical responseを取り入れた活動。こどもたちは楽しそうに動きながら文末に意識を向けていた。
何度か繰り返しながら、文末のピリオド、クエスチョンマーク、エクスクラメーションマークなど、母語で補足説明を加えながら復習をした。
さらに、ワークブックに出てくる例文についても同様の活動。
宿題確認
プロジェクターにワークブックのページを写しだし、順番に正答例を表示しながら宿題を各自チェックしていた。あまり効率よい作業とは言えないが、逆に言えば子どもたちがピリピリしてチェックするような雰囲気ではなく、ゆったりと自分のペースを保証された流れで作業をしていた。
休み時間
5時間目の後の休み時間は、少し長めの15分休みで、子どもたちは外気温がマイナス20度を下回るなど特別な事情がない限り、外に出て遊ばなければならないらしい。子どもたちは廊下にかけてあった防寒着を着て帽子をかぶり、外に出て行く。
この時間はRiikka先生もField Duty(校庭の見回り)の担当になっていたので、黄色のベストを身につけ巡回に行くと言うことなので、一緒に校庭に出た。7〜9年生のJuhannuskylaに比べて、子どもたちは無邪気に元気よく遊んでいる。注意を渇望する子どもは先生にまとわりついてくると言うのも、これくらいの年頃の子どもによく見られることかもしれない。女の子のひとりは私にも飛びついてきた。
春のうららかな日だったが、マイナス20度とまで行かなくても、冬になったらどんな様子なのか。
文法のまとめ
休み時間の後は、be動詞の縮約形と否定という文法事項に関するまとめを行った。ワークブックの例について母語で説明を行った後、スクリーンに映し出された例文をみんなでダンスしながら読みながら、縮約形や否定が出てきたところでそれぞれに応じた手拍子を入れるという活動だった。授業の中でこのようなphysical responseを活用することは、教員研修でも推奨されているそうだ。
そんな中、ひとりの女の子がずっと読み物教材を自分の机に持ってきて読んでいた。その子に対しては、先生は咎めたり、無理に活動に参加させようとはせず、後で読んだ内容をノートに書いて見せてね、とだけ伝え、そっと静観していた。終わり頃に気が向いたのか、ダンスはせずとも、手拍子だけは参加していた。
作文の活動
ワークブックに載っていた、与えられた表の中から好きな項目を選んで文を作るという活動を行った。生徒たちはそれぞれのペースで課題に取り組み、早く終わった子どもはその先のワークブックの課題をやったりしていた。
一方、先生は前回の授業を欠席していてリスニングの課題ができなかった生徒のために音声を再生して課題に取り組ませ、その間教室を回って支援が必要な子どもに主に母語でコメントを与えていた。
全員が課題をやり終えた頃、スクリーンに正答例を映し出し、子どもたちは各自答えの確認をしていた。効率やテンポを重視する日本であれば、なかなか全員が確実に終わるまでゆったりと待つことが少ないように思うが、こちらでは多少ダレていると感じても、全員が安心して終えるまで待つ余裕が感じられる。
答え合わせの間、前回の授業で回収した単語のQuizを採点したものを返却して回っていた。基本的な単語のつづりを書く小テストだったが、beautifulのiをyと書き間違えたり(フィンランド語ではyは/u/を表す)、フィンランド語には存在しないshやchを含む単語の間違いが見られ、興味深かった。
天候の表現
最後に、天候に関する表現をおさらいした。このクラスの生徒にとっては英語は第2外国語で、第1外国語はドイツ語を履修しているクラスなので、ドイツ語との対比についても触れていた。
かなり早い学年から複数の外国語を学習することは、言語の学習方法についてのコツがつかみやすくなるらしく、よい効果が見られるという。
日本では複数の外国語どころか、「外国語活動」であるはずのものが、「原則英語」というインチキな制約がかかった状態だ。ただし、では日本も小学校から複数言語をやらせようなどとすぐに真似できるものではなく、きちんと教えられる教員の養成やクラスサイズ、教材など環境をしっかり整えてからでなければ、狂気に拍車をかけることになることは明白だ。
7時間目:6年生英語
7限目はTammelaでは一日の最終コマで、14:15〜15:00までである。
あいさつ〜紹介
簡単な始まりのあいさつの後、ゲストがいることを紹介し、What is your 〜?やWhat do you 〜?という文を使って、何でも知りたいことを質問してみるように指示。生徒たちからさまざまな質問が出て、答える。さすがにこの学校の最上級学年で、英語学習も4年目に入っているので、生徒も先生も、かなり自由に英語を使っている。
宿題の確認
宿題は教科書の内容ではなく、独自の印刷教材だったようで、教材提示装置を使って印刷物をスクリーンに映し出し、先生は適宜生徒を指名しながら答えを確認し、手もとの印刷物に書き込んでいった。それを見ながら生徒たちは自分の答えを確認していく。やはり、どちらかというと、ゆったりめの進め方だが、遅い生徒も安心してゆっくり確認できている様子であった。
宿題の課題はNational Examの一部で、まとまった英語の文章を読み、内容に関するフィンランド語の質問に、フィンランド語で答えるというもの。パッセージの分量もかなりまとまったもので、正確な語数はわからないが、日本の高校1年生用教科書の1セクション分くらいはありそうな感じだった。フィンランドの教科書は、とにかく既習の英語でたくさん読ませる題材が多量に提供されている。
リーディング活動
地元タンペレ市内にある遊園地に関する読み物を読み、まずは内容に関する設問にペアで取り組み、内容の理解を確認した。生徒たちはワークブックに載っている単語リストを参照しながら、互いに協力して内容を確認していた。一部英語を用いていた生徒もいたが、おおむね母語で行っていたようである。
ここでもかなりゆったりと時間を割き、先生は生徒を回り様子を見ながらどんなペースの生徒も充分内容を確認できるように配慮していたようである。
表現活動
その後、内容に関するダイヤログの一部が空欄になっているものを使って、ペアで自分の意見も交えながら対話をするという課題に取り組んだ。
骨組みとなっているダイヤログは英語なので、生徒たちはほぼ英語のままやりとりをしていた。母語に流れて言ってしまったペアのところを先生が回り、時折英語で話しかけると生徒たちも英語に戻る。6年生までの積み重ねがあるので、きっかけがあればいつでも英語に戻れるところが素晴らしい。ただ、あまり英語が得意そうではない生徒の場合、sunnyがshunnyになるなど、一部母語の干渉と思われるような発音の間違いが見られたりした。
ビデオ作品の紹介
最後に、前回までのプロジェクトで制作した、料理の作り方を紹介するビデオ作品の紹介が行われた。生徒たちが紹介したいレシピを考え、それを英語で説明しながら映像を制作するというものだった。
3つの授業を通じて感じたこと
母語を効果的に活用していることと、教材自体が指導内容を巧みに繰り返す構成になっているという、二つのことを3つの授業を参観して感じた。
午前の5年生に比べると、同じ先生が教えていても、4年生の授業では要所要所での母語の使用が多いように感じた。ただし、多いというのは無駄に多いのではなく、無理に英語でやっても仕方ないところと、英語でも十分できそうなことをきちんと区別して使い分けている結果である。5年生に比べて母語の使用頻度が多いのはやむを得ないことであり、無駄に母語が使われていたという印象もない。逆に、6年生の授業ではかなり自由に英語を使っており、生徒もそれをしっかり理解しており、生徒同士のやりとりの中でも英語の割合が高くなっている印象であった。
わからないことまで無理して英語でやったとて得ることはない、という至極合理的な考えなのかもしれない。このあたり、何でもかんでも英語でやることが大事だという、「オールイングリッシュ至上主義」とも言えるような判断基準に振り回されている日本の状況と比べて、考えさせられることが多い。大事なのは、どの場面で、何のために、どういった英語を使うのか、逆に、どこで母語を効果的に活用するのか、という判断基準だろう。
フィンランドの授業というと、何か特別な授業方法や内容なのではないかと思われがちだが、意外にも、文法的なポイントも多く扱っていて、基本的な語句の定着を図る活動も多く取り入れられていると感じた。日本の授業との大きな違いは、何かと説明に偏りがちな日本の授業に比べて、身体を動かしたり、作業をしたりしながらの活動が豊富であるということ以外に、それぞれの学習項目が繰り返し触れられる頻度が高いことが挙げられる。日本のように、一度説明したらその後はもう既習事項として明示的には繰り返されない傾向が強い教材構成に比べ、フィンランドの教材は長期間にわたって同じことを少しずつ丹念に繰り返す構成になっているようである。
授業終了後
終了後、少しの間教室に残ってRiikka先生と話をしていたら、黒いユニフォームの教室清掃スタッフがやってきて、床を掃いたり、机の上や黒板を絞ったスポンジできれいに拭いていった。
ちなみに、日本にあるような黒板消しはなく、教室にはスポンジが置いてあり、それを教室に設置された流しで濡らして拭くというのが普通のやり方らしい。
教室にはそれほど長時間いたわけではなく、ものの10分程度だったが、教室を出ながらRiikka先生は「きっと今頃はもう教員ラウンジは誰もいなくて空っぽよ」と言っていた。そしてラウンジに行ってみると本当に誰ひとりおらず、電気も消えていた。何という潔く素早い終わり方か!