ある都立高校で出前授業をしてきました。
いろいろな大学からいろいろな分野の教師を呼んで、1、2年生を対象に大学と同じように90分ひとコマの授業を行うという、進路指導と絡めた企画でした。私の担当は、「洋楽で発音を磨こう!We Are The Champions!」と題して、文字通りQueenの曲を使って発音を向上するという授業でした。
こういう授業の場合、教室に入って最初に対面するときは緊張します。どんな生徒たちか、英語には興味があるのか、これまでどんな学習歴だったんだろう、学校生活は楽しんでるのか背を向けてるのか、先生たちとの信頼関係は?などなど、短時間でいろいろな角度から当たりをつけ、個々の生徒の特徴をつかんで授業の展開に活かしていきます。
全体が緊張気味のときは、どの子とやりとりすると和めそうか、元気を出してもらうには誰をいじったらいいか、誰に水を向けるとみんなから意見が出始めるか、などなど。きっと、初対面のお客相手に高座に上がった噺家もこんなことやってるんでしょうね。
でもツカミの感触を捕らえ、ひとたび授業が始まれば、あとはお互い楽しいひとときです(楽しいのは私だけ?)。
今回の授業では、まずは英語らしい発音のポイントとして、音節感覚、語の連結、注意すべき音という三つのことを説明し、和訳付きの歌詞に目を通してもらってから、Queenが演奏している映像を流しました。
続いて、注意すべき音について発音のコツや語の連結について解説、歌詞から取った具体例を使いながら全体で発声したり、個別に指名しながら練習しました。説明や全体練習が続くと、目がトロンとしてくる女子がいたので聞いてみると、寝たのは午前3時、思い立ってお片付けに励んでいたとか。他にも、何度指名されても笑いのツボに入って発音できない女子生徒や、蚊の泣くような声の生徒など、いろいろな生徒がいましたが、励ましたりすかしたりしながら練習を進め、仕上げに歌詞全体をメロディをつけてリピート練習してから、グルグル個別練習に入りました。
グルグルのような個別対面指導は初めてだったようで(そりゃそうか)、最初の数周はみな苦戦していました。例の笑い女子は、4周目くらいまでずっと笑い続けていましたが、やがて全員なんとかサビの部分をクリア。40分くらいグルグルしたところ、早い生徒数名が全部クリア、大半が1番からサビまでクリアできました。
締めくくりに、カラオケ風に歌詞を表示してあるビデオを見ながら全員で大合唱。サビの部分は全員自身を持って歌うことができ、1番もかなりしっかり歌えていました。
最後に、「この授業を受けてみて、英語の発音に自信がついた人?」と聞いてみたところ、ほぼ全員がさっと手を挙げてくれました。授業開始時に「発音にある程度自信がある人?」と問いかけたときにはひとりも手が上がらなかったことを考えると、お世辞と気遣いがあったとしても、大きな進歩か。
歌っているとき、別の授業が終わった生徒が廊下からのぞき込んでいました。あとでその生徒が教室に入ってきて友だちと「いいなぁ、めっちゃ楽しそうじゃん!」と(私に憚らず)言うので、「入ってきて一緒に歌えばよかったのに」と声をかけると、「抽選で落ちちゃったんです」と可哀想な返答。でも、20名ちょっとに納めてくださったので、密度も濃く、とてもやりやすかったです。
この授業がきっかけで大東文化大学を志願してくれたり、英語が好きになってくれたりするとうれしいです。