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「ニホンジンダネ」

(March 11, 2004)

現地のベトナム人たちも心なしか緊張している様子で、皆ほとんど口をきかず、整然と二列になってゆっくり進んでいく。これはやばい列に紛れ込んでしまったかもしれないと、かなり不安になっていると、後ろの方でNhat ban(ベトナム語で「日本人」)というひそひそ声が聞こえてきた。だいたいあまり観光客が来ないような場所へ行くと、たいていこういう会話が耳に入る。不思議なもので、同じようなアジア系の顔をしていても、服装やしぐさ、体格からどこの国から来たのかだいたいわかってしまうようだ。
まあ、いつものことだと無視していると、その内緒話もだんだんエスカレートしてきて、とうとう「ニホンジンダネ」というひと言が聞こえて振り返った。ベトナム人の若者にはまだまだ珍しい茶髪をし、洒落た革ジャンを着た若者がニコニコして立っていた。最初は錆び果てた自分のベトナム語で「どうして俺が日本人だってわかったんだ?」と問いかけたが、向こうはそれよりもはるかに流暢な日本語で「日本に3年もいて、数日前に帰ってきたばかりだから、勘でわかるんだ」と答えてきた。
チョイという名のその若者は何と、私が勤務する中部大学のすぐそばの愛知県日進市で、3年間研修生として建設会社で働き、コンクリート打ちの研修をしていたそうだ。世界は狭い。心細さから解放され、彼も日本が懐かしそうだったせいもあり、思わず会話が弾んで見張りの兵士ににらまれた。一緒にいたチョイの友人も、ちょっとポケットに手を突っ込んでもぞもぞしていただけで難癖つけられ、ポケットの中身を見させられた。
そこから先は、彼が後ろから小声で日本語の指示をしてくれたので、どこで荷物を預けるのか、その後どうやって受け取るのか、あれこれ面倒見てくれて助かった。彼は以前中学生の頃ホーチミン廟へ来たことがあるらしい。現地民の間では、ホー主席の遺体は本物なのかどうか、いろいろな噂もあるようだ。不謹慎な憶測だが、蝋人形だったとしても確かめる術もないし、ばれることもないだろう。


Posted by Yoshi at 01:45 AM

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